複数の動作を1回で済ませる|作業を減らす現場改善10選と安全な始め方をやさしく解説

製品を置いたあと、次の人が取りに来る。ケースへ入れたあと、カウンターへ手を伸ばす。カバーを外して作業し、終わったらまた取り付ける。皆さんの職場にも、こうした「一つひとつは短いけれど、何度も繰り返す動作」がありませんか。

現場では、決められた手順を守り、品質を崩さず、納期にも間に合わせようと、毎日たくさんの工夫が積み重ねられています。それでも忙しさが続くと、「もう少し速く手を動かせないか」という話になりがちです。しかし、人に速さを求め続けるやり方には限界があります。疲れれば動きは変わり、焦りは取り違えやけがのきっかけにもなります。

そこで今回一緒に見たいのが、動く速さではなく、動作の回数そのものを減らす改善です。「取る・置く・押す・戻す」を一つずつ眺め、二つを一つにまとめられないか、同時にできないか、順番を変えれば後の作業をなくせないかを考えます。

この記事では、ユーザーから提供された改善10事例を、改善効果40点、導入しやすさ25点、横展開しやすさ20点、やってみたくなる度15点の合計100点で整理しました。点数は各職場での実測値ではなく、今回の評価基準に基づくランキングです。だからこそ、順位をそのまま採用するのではなく、ご自身の現場条件へ置き換えて読むことが大切です。

結論を先に言えば、「何度もやる」を「1回で済ませる」改善は、設備投資より前に、置き場所・向き・順番・保持方法を見直すところから始められます。ただし、品質確認や安全確保のために必要な動作まで削ってはいけません。小さく試し、前後の動作数と異常の有無を比べ、良ければ標準へ反映する。その進め方まで、10の小ネタとともに具体的に解説します。

目次

動作数を減らす改善は「速く」ではなく「少なく」が出発点

同じ仕事量を短い時間で終えたいとき、つい手の速さへ目が向きます。けれども、速さだけを追うと、現場の頑張りに頼り続けることになります。まず見るべきなのは、仕事に本当に必要な動作と、仕組みの都合で増えている動作の境目です。

動作と仕事の価値を分けて見る

たとえば製品をケースへ収める作業では、「製品を正しい向きでケースへ入れる」ことが目的です。そのあと別の場所にあるカウンターを押す動作は、数量を保証するためには大切でも、手を往復させること自体に価値があるわけではありません。ケースの入口で自然にカウントできれば、数量確認を残したまま往復だけを減らせます。

同じように、前工程が製品を仮置きし、次工程が歩いて取りに行く流れでは、製品を受け渡すことは必要ですが、「仮置き」と「取りに行く」の両方が必要かは見直せます。大切なのは、作業そのものを雑にすることではなく、目的を保ったまま余分な動きを取り除くことです。

一回化には三つの形がある

「1回で済ませる」と聞くと、複数個をまとめて運ぶ方法だけを思い浮かべるかもしれません。実際には、次の三つの形があります。

  1. 回数をまとめる:1個ずつ取り出していたものを、必要数まとめて取り出す
  2. 二つを同時にする:ケースへ入れる動きの中で、数量も数える
  3. 後の動作を消す:順番を変え、並べ直しや取り付け直しを不要にする

この三つを知っておくと、改善の候補がぐっと見つけやすくなります。「まとめられないか」だけで止まらず、「触れたついでにできないか」「最初の向きを変えれば後で直さなくてよいか」と問いを広げられるからです。

小さな動作ほど繰り返し回数を見る

一度だけなら気にならない動作でも、毎日、毎ロット、毎個繰り返されれば、身体と時間の負担になります。反対に、頻度の低い大きな動作は、安全対策や品質条件が複雑で、最初の小ネタには向かないことがあります。

まずは「短いけれど回数が多い」「毎回元の位置へ戻す」「同じ品物へ二度触れる」という場面を探してみてください。作業者の動きを急がせるのではなく、仕組みの側から回数を減らす。これが今回の改善の出発点です。

4つの評価軸で比べる「何度もやる」を1回で済ませる改善10選

改善案は、効果だけが大きければ採用できるわけではありません。費用、加工の手間、他工程への広げやすさ、現場が試してみたいと思える分かりやすさも大切です。今回は品質と安全を保ちやすいかも踏まえ、四つの軸で比べました。

評価軸と配点

評価軸配点評価内容
改善効果40点作業時間、動作数、手待ち、身体的な負担をどれだけ減らせるか
導入しやすさ25点費用や加工が少なく、現場ですぐ試せるか
横展開しやすさ20点他の製品、工程、部署でも応用できるか
やってみたくなる度15点効果が直感的に分かり、現場が試したくなるか
合計100点改善効果を最も重視し、品質と安全の保ちやすさも加味

ここでの点数は、特定の工場で測定した改善率ではありません。改善案を比べるための今回の評価です。実際の優先順位は、発生頻度、製品の重さ、必要な精度、作業場所、設備の危険源によって変わります。

改善10選ランキング

順位分かりやすい改善名改善効果導入しやすさ横展開しやすさやってみたくなる度総合点
1次工程の手元へ直接置き、受け渡し動作をなくす38/4025/2520/2014/1597点
2箱を横向きにして、持ち上げるだけで5個まとめて取り出す36/4024/2518/2015/1593点
3製品をケースへ入れながら、同時に数量をカウントする35/4024/2518/2014/1591点
4何度も回す蛇口を、ワンタッチレバーに替える37/4020/2519/2014/1590点
5カバーを外さず、開いたまま作業できる構造にする35/4021/2519/2014/1589点
6作業台と材料配置を整え、レンガ積みを5動作にまとめる40/4015/2518/2015/1588点
7原稿を最後のページからコピーし、並べ直しをなくす30/4025/2520/2013/1588点
8テープ止めを2か所から1か所へ減らす29/4025/2520/2013/1587点
9製品を押し込む動きで、そのまま刻印する34/4020/2517/2014/1585点
10専用治具でテスト端子を一度に接触させる35/4017/2518/2013/1583点

点数を見るときの三つの注意

第一に、総合点が高くても、現場に同じ作業がなければ候補にはなりません。名称ではなく、「仮置きがある」「1個ずつ触っている」「元へ戻している」といった動作の構造を見てください。

第二に、導入しやすさが高い案でも、変更前の品質条件は確認します。テープを1か所減らす例なら、貼る回数はすぐ減らせても、封かん強度や輸送状態の確認なしには広げられません。

第三に、同点でも狙いが異なります。レンガ積みの例は改善効果が大きい一方、作業台や材料配置をまとめて検証する必要があります。コピー順の変更は効果が限定されても、費用をかけずに始めやすい案です。点数は答えではなく、試す順番を話し合うための共通の物差しとして使うと役立ちます。

1位から3位|受け渡し・取り出し・カウントを一つにする

上位三つに共通するのは、高価な装置を足すより、置き場所や箱の向き、道具の位置を変えていることです。すでに行っている動きの中へ次の仕事を組み込み、二度触る場面を減らしています。

1位|次工程の手元へ直接置き、受け渡し動作をなくす

複数の動作を1回で済ませる|作業を減らす現場改善10選と安全な始め方をやさしく解説
複数の動作を1回で済ませる|作業を減らす現場改善10選と安全な始め方をやさしく解説

前工程の人が製品を自分の横へ置き、次工程の人がそこまで取りに行く流れでは、「置く」「近づく」「持ち上げる」が重なります。最初から次工程の人が取りやすい位置へ置けば、受け渡しのためだけの移動を省けます。

この改善が97点になった理由は、設備や複雑な治具をほとんど必要とせず、多くの工程へ応用できるからです。製造ラインだけでなく、検査済み品を梱包へ渡す場面、厨房で下ごしらえ品を次の人へ渡す場面、事務作業で処理済み書類を次の担当場所へ送る場面にも、同じ考え方を使えます。

ただし、単に「近くへ置く」だけでは不十分です。前後工程の双方が無理なく手を伸ばせるか、良品と未処理品が混ざらないか、通路を狭めないかを確認します。境界線、受け渡し台、向きの表示、置ける数量の上限を決めると、位置が戻りにくくなります。

試すときは、段ボールなどで仮の受け渡し面を作り、一時間や一ロットだけ使ってみる方法があります。歩数、持ち替え、手待ち、取り違えの有無を前後で見れば、採用判断がしやすくなります。

2位|箱を横向きにして、持ち上げるだけで5個まとめて取り出す

箱を立てた状態で中身を一つずつつかみ、別の容器へ置いているなら、箱の向きを変えるだけで流れが変わる可能性があります。箱を横向きにし、持ち上げる動きで必要数がまとまって出るようにすれば、「取り出す」と「投入する」を一つへ近づけられます。

分かりやすい点は、手の速さを上げなくても、触れる回数を減らせることです。缶、容器、棒材、小箱など、形がそろって並ぶ品物へ応用を考えられます。出口の幅やストッパーを工夫すれば、必要数で止める仕掛けにもつながります。

一方で、箱を傾けたときの落下衝撃、製品どうしの接触、必要数を超えて出る可能性は見逃せません。柔らかい受け面を置く、出口を絞る、仮の仕切りを付けるなど、製品に合った条件を探します。箱を持ち上げる動作が身体の負担を増やさないかも確認しましょう。

3位|製品をケースへ入れながら、同時に数量をカウントする

製品をケースへ入れたあと、手を別の方向へ動かしてカウンターを押しているなら、その往復を一つにまとめられないか考えます。ケース入口の近くへカウンターを置き、投入の自然な動きの中で触れられるようにする改善です。

余分な手の移動が減るだけでなく、「入れたが押していない」「押したが入れていない」という動きの分離も抑えやすくなります。包装、検品、仕分けなど、1個の処理と1回の記録が対応する場面へ広げられます。

ポイントは、無理に指を伸ばさせないことです。手首が曲がる、ケースの縁に触れる、カウンターだけ誤って押せる位置では、新しい負担や数え間違いが生まれます。製品の通過で機械的に作動する方法も候補ですが、詰まりや二重計数の確認が必要です。

上位三例を自分の職場へ置き換えるなら、「誰が二度触っているか」「容器の向きを変えたらまとめて出せるか」「投入と記録を一つの流れにできるか」と問いかけてみてください。答えは、目の前の置き方に隠れていることがあります。

4位から7位|回す・外す・運ぶ・並べる動作をなくす

4位から7位は、毎回繰り返していた操作や、作業後の戻し作業へ目を向けた改善です。道具の構造、材料の配置、手順の順番を変えることで、「あとでもう一度」を減らします。

4位|何度も回す蛇口を、ワンタッチレバーに替える

従来の蛇口は、開けるときも閉めるときも何回かひねります。レバー式のコックへ替えれば、一度の操作で開閉しやすくなります。手が濡れている場面でも扱いやすく、蛇口だけでなく、バルブ、クランプ、ロック機構にも同じ発想を展開できます。

ここで減らしたいのは「回す回数」であって、閉止の確認ではありません。流量を細かく調整する必要がある作業、意図しない開放が危険につながる流体、操作権限を分けている設備では、ワンタッチ化が適さない場合もあります。誤操作防止、開閉方向の表示、漏れの有無を確認したうえで選びます。

5位|カバーを外さず、開いたまま作業できる構造にする

ラベル交換、点検、清掃、材料交換のたびにカバーを外し、置き場所を探し、作業後に付け直しているなら、ヒンジや受け治具で開いたまま保持する方法があります。取り外しと再取り付けが消え、ネジやカバーの紛失も防ぎやすくなります。

ただし、開いたカバーが落下したり、通路へ張り出したり、設備の動きと干渉したりしてはいけません。保持部の強度、開き角度、手を離しても保持できるか、閉め忘れを検知できるかを見ます。設備の保護機能を無効にする変更ではなく、停止・隔離した保全作業を安全にしやすい構造として考えることが大切です。

6位|作業台と材料配置を整え、レンガ積みを5動作にまとめる

この事例では、作業の高さ、レンガとモルタルの置き場所、材料の向きなどをまとめて見直します。足場を作業しやすい高さへ合わせ、レンガとモルタルを手の届く範囲へ置き、レンガ表面をあらかじめそろえ、適量のモルタルを押し付けやすくします。

改善効果は40点満点ですが、導入しやすさは15点です。理由は、一つの道具を替えるだけではなく、作業全体のつながりを現場で検証する必要があるからです。材料を近づけすぎて通路が狭くならないか、足場が安定しているか、作業高さが人によって合わないことはないかも見ます。

この例から学べるのは、一動作だけでなく、作業台・材料・向き・供給方法を一組で見ることです。組立、盛り付け、梱包、部品供給などでも、手元だけを直すより大きな効果につながる可能性があります。

7位|原稿を最後のページからコピーし、並べ直しをなくす

複数ページの原稿を先頭からコピーすると、排紙の向きによっては出力後にページ順を並べ直す必要があります。最後のページからコピーし、出力時点で読む順に積み上がるなら、並べ直しをなくせます。

この改善は、道具を買わず、その日から試しやすいのが魅力です。スキャン、帳票印刷、資料の封入などでも、「後で順番を直している」場面へ応用できます。作業の速さではなく、先に順番を変えて後工程を消す見本です。

機械の排紙方向、片面・両面の違い、部単位印刷の設定によって結果が変わるため、最初に少ない枚数で確かめます。うまくいったら、原稿の置き方を写真や短い表示で共有すると、元の順番へ戻りにくくなります。

8位から10位|貼る・押す・接触させる回数を減らす

8位から10位は、包装、刻印、電気検査のように、品質や安全の条件がはっきりした作業です。動作を減らす狙いは同じでも、変更前に守るべき条件を言葉にしておくことが欠かせません。

8位|テープ止めを2か所から1か所へ減らす

「念のため」と二か所をテープで止めている作業を見直し、一か所でも必要な強度を満たせるなら、貼付箇所を減らします。テープを取る、長さを出す、切る、貼る、押さえるという一連の動作が一回分減り、材料使用量と開封時の手間も減らせます。

包装、仮止め、配線固定などへ横展開しやすい一方、勝手な削減はできません。輸送中の振動、荷重、保管期間、温度、封かんの基準を確認し、限定した荷姿で試します。見た目だけで判断せず、変更前と同じ役割を果たせることを確かめてから広げます。

9位|製品を押し込む動きで、そのまま刻印する

従来は、製品を治具へセットし、手を離し、別のスタートボタンを押していたとします。製品を持ったまま刻印位置へ押し込み、その押し込む動きが刻印のきっかけになるよう設計すれば、ボタンへ手を移す動作をなくせます。圧入、穴あけ、検査スイッチにも考え方を広げられます。

ただし、これは単なるボタン位置変更ではありません。手指が可動部へ入らないこと、製品が正しく位置決めされないと作動しないこと、途中で引っ掛かった場合に予期せぬ再起動をしないことが先です。機械の改造は、通常の使い方だけでなく、詰まりや誤った置き方など予想できる使われ方も含めて危険を見ます。

改善前の安全機能を省くことは「動作削減」ではありません。必要なら設備に詳しい人やメーカーと確認し、仮設の試行で危険部へ近づかないことを確かめます。一回化より先に、安全な一回であることが条件です。

10位|専用治具でテスト端子を一度に接触させる

複数の端子へワニ口クリップを一つずつ取り付け、検査後に一つずつ外しているなら、専用治具を押し当てるだけで複数端子へ接触させる方法があります。取り付け・取り外しの回数を減らし、接触位置のばらつきや接続順の間違いも抑えやすくなります。

電気検査、導通確認、書き込み作業などへ応用できますが、端子ごとの位置精度、ばね圧、接触抵抗、逆接続防止を確かめる必要があります。強すぎる圧力は端子を傷め、弱すぎれば接触不良になります。治具が斜めに入らない案内、向きを間違えない形、摩耗を点検しやすい構造も大切です。

この三例は、「回数が減るか」と同時に「守るべき機能が残るか」を見せてくれます。テープなら封かん、刻印なら安全な位置決め、検査治具なら安定接触です。改善案を説明するときも、減らす動作と残す機能をセットで伝えると、安心して試しやすくなります。

選外5事例から見える小さな改善の広げ方

今回の上位10件には入らなかったものの、選外の五事例にも、現場で使える問いが詰まっています。適用できる作業がやや限定されるため順位から外れましたが、自分の職場に似た場面があれば有力な候補です。

4本の指で複数のラベルをまとめて貼る

ラベルを一枚ずつ取り、位置を合わせ、貼っているなら、複数枚を同時に保持して一度に貼れないかという発想です。ラベル間隔が決まっている、貼付面が平ら、位置ずれの許容範囲が明確といった条件が合えば、回数をまとめられます。

一方、指先だけに位置決めを頼ると、間隔や傾きが変わることがあります。簡単な台紙、位置決め枠、ラベル供給の向きをそろえる仕掛けと組み合わせると、個人の器用さに頼りにくくなります。

アルコールをポンプ容器へ移し、キャップ開閉をなくす

使用のたびに容器を取り、キャップを開け、液を出し、また閉めて戻しているなら、適合するポンプ容器で押す動作へまとめる方法があります。清掃やふき取りのように使用頻度が高い場面では、キャップの往復が減ります。

ただし、液体に適合した容器であること、揮発や漏れを防げること、誤使用しない表示があること、保管条件を守れることが前提です。中身が分からない別容器へ勝手に移すのではなく、職場のルールと安全データを確認します。

時計皿とビーカーの間に隙間を設け、つかみ直しをなくす

ぴったり重なった物は、指を差し込めず、持ち上げるためにつかみ直すことがあります。小さな隙間や持ち手を作れば、最初からつかみやすくなります。薄板、トレー、ふた、重ねた容器などにも通じる考え方です。

隙間は小さくても、異物混入、液だれ、転倒へ影響しないかを見ます。「つかめる形」にすることは、速さだけでなく、落下の防止や手首の負担軽減にもつながる可能性があります。

空き缶用の箱を追加し、木箱から取り出す手順を省く

空き缶と使用前の物が同じ箱に混ざり、次の作業で選り分けているなら、発生した時点で別の箱へ入れる方法があります。あとで木箱から取り出す作業をなくし、状態の違う物を見分けやすくします。

この改善は箱を増やすため、置き場、表示、回収の流れまで決めないと、かえって狭くなることがあります。分ける目的、置ける数、満杯時の扱いを一緒に決めると機能します。

プッシュボタンとパネルを治具で同時に取り付ける

二つの部品を別々に位置合わせして取り付けているなら、治具で相対位置を決め、一つの操作で組み付けられないかを考えます。部品の向きと位置が治具で決まれば、持ち替えや仮止めを減らせます。

ただし、傷、かみ込み、締結不足、部品の公差に注意が必要です。治具を押し込めば合うのではなく、正しい組み合わせだけが無理なく入る形にします。

選外事例を眺めると、改善の種は「まとめる」だけではありません。開閉しない、つかみ直さない、あとで分けない、別々に位置決めしないというように、動詞の重なりを一つ消すことが共通しています。身近な作業名ではなく、動詞に分解して似た構造を探すと、横展開しやすくなります。

10事例に共通する4つの考え方とECRS

10の事例は作業内容がばらばらに見えますが、改善の考え方は四つに整理できます。この型を覚えると、事例をまねるだけでなく、目の前の作業から新しい案を考えやすくなります。

1.別々にしていた作業を同時に行う

「ケースへ入れる+数える」「製品を押し込む+刻印する」のように、別々の動作を一つの流れへまとめます。二つの目的が一対一で対応する作業に向いています。

同時化のポイントは、片方を忘れない仕掛けにすることです。人が意識して二つを同時にこなすだけでは、忙しいときに抜ける可能性があります。投入した製品がカウンターへ自然に触れる、正しい位置まで押し込まないと刻印できないなど、動きと結果が結び付く形を考えます。

2.一個ずつではなく、まとめて処理する

箱から5個まとめて取り出す、複数端子へ一度に接触させるように、同じ動作を必要数まとめます。繰り返し回数が多く、対象の形や間隔がそろっている場面で効果を出しやすい考え方です。

まとめる数は多いほどよいわけではありません。重くなる、落下時の影響が大きくなる、数の確認が難しくなるなら逆効果です。「人が無理なく扱え、必要数を間違えず、製品を傷めない」という範囲で決めます。

3.取り外しと元に戻す作業をなくす

カバーを取り外さず、開いた状態で保持する例が代表です。取り外した物の仮置き、紛失、再取り付け、締め忘れまで一緒に減らしやすくなります。

ほかにも、工具を手から離して棚へ戻す代わりにバランサーで待機させる、ふたを別置きせず本体につないで保持するなど、退避位置を決める方法があります。ただし、可動部との干渉、落下、通路への張り出しがないことが条件です。

4.手順の順番を変えて後工程をなくす

最後のページからコピーする例は、作業そのものを増やさず、開始順を変えるだけで並べ直しをなくします。後で向きを直す、種類を分ける、順番をそろえるという作業があるなら、前の工程で正しい向き・種類・順番にできないかを見ます。

この考え方は「後工程はお客様」という見方とも相性がよいものです。自工程が置きやすい場所ではなく、次の人がそのまま使える向きと位置へ渡せば、工程全体の動作が減ります。

ECRSを現場の言葉へ置き換える

改善案を考える枠組みにECRSがあります。Eliminate(排除)、Combine(結合)、Rearrange(入れ替え)、Simplify(簡素化)の頭文字です。難しく考えず、次の問いへ置き換えてみてください。

ECRS現場での問い今回の例
排除その動作は、そもそもなくせないか仮置き、並べ直し、再取り付けをなくす
結合二つを一度にできないか投入とカウント、複数端子の接触
入れ替え順番や向きを変えたら後がラクにならないか最終ページからコピー、箱を横向きにする
簡素化回す・持ち替える・位置を合わせる回数を減らせないかレバー化、位置決め治具

公的な技術資料でも、動作のムダを見つける際に動作経済の原則を照らし合わせる考え方が示されています。大事なのは用語を覚えることではなく、いつもの動作へ新しい問いを当てることです。

取る・置く・押す・戻すのうち、今日一つだけ消せる動作はないか。

この問いなら、改善会議を待たなくても、現場のみんなで目の前の作業を眺め始められます。

品質と安全を守るために「減らしてはいけない動作」を見分ける

動作数を減らす改善では、「少ないほど正しい」と考えないことが大切です。確認、隔離、固定、停止など、品質や安全を守るための動作には役割があります。減らす前に、その動作が何を守っているかを確かめましょう。

動作の役割を三種類に分ける

作業を観察するときは、動作を次の三種類へ仮に分けます。

  1. 価値を生む動作:加工する、組み付ける、検査結果を得る
  2. 必要な保護動作:位置を確認する、固定する、停止する、識別する
  3. 仕組みで減らせる動作:取りに行く、仮置きする、つかみ直す、並べ直す

三番目から候補を探すと、品質と安全を崩しにくくなります。ただし、同じ「押す」でも役割は違います。カウンターを押す動作は数量保証に関係し、非常停止ボタンは危険を止める役割です。動詞だけで消すのではなく、目的まで確認します。

10事例で残すべき条件

改善案減らす動作残す・確認する条件
直接受け渡し仮置き、歩行、持ち上げ良品区分、数量上限、通路、無理のない姿勢
箱の横向き化1個ずつつかむ必要数、落下衝撃、製品同士の接触
投入とカウントカウンターへの往復二重計数、数え漏れ、自然な手首角度
レバー式コック何度も回す誤開放、漏れ、流量調整、表示
カバー保持取り外し、再取り付け落下防止、干渉防止、停止状態
テープ1か所化一回分の切る・貼る封かん強度、輸送条件、荷姿
押し込み刻印ボタンへの手移動手指の隔離、位置決め、予期せぬ作動防止
一括テスト治具端子ごとの着脱接触圧、極性、位置、摩耗

この表の右列が曖昧なら、まだ広げる段階ではありません。「強度は大丈夫そう」「いつも問題ない」ではなく、何を、どの条件で、どう確かめるかまで決めます。

機械へ手を加える改善は別扱いにする

置き場所の線を引く改善と、設備の作動方法を変える改善は、同じ速さでは進められません。押し込みで刻印する、カバーの保持方法を変える、電気接触治具を作るといった案は、危険源や設備仕様へ影響します。

厚生労働省の機械安全に関する指針では、機械の安全を考える際に、故障だけでなく予見できる誤使用も含めて解析する考え方が示されています。通常作業がうまくいくかだけでなく、製品が斜めに入った、治具が摩耗した、異物が挟まった、停電後に復帰したといった状態も考えます。

設備に詳しい人、保全の担当、メーカーなど、必要な関係者と一緒に確認してください。既存の保護装置を外したり、停止確認を省いたりする案は採用しません。

品質確認を別の仕組みへ移す

必要な確認動作も、目的を保ったまま仕組みへ移せる場合があります。目で一つずつ数える代わりに、決まった数だけ入る仕切りを使う。向きを確認して置き直す代わりに、逆向きでは入らない形へする。確認をなくすのではなく、間違いにくい構造へ変えます。

減らすのは安全や品質ではなく、それらを守るために人が繰り返していた余分な往復です。

この線引きが共有できれば、「効率を取るか安全を取るか」という対立を避け、両方をよくする案を探せます。

ムダな反復動作を見つける観察ポイントとチェックリスト

毎日同じ作業をしていると、動きはあまりに自然になり、ムダとして見えにくくなります。だからこそ、最初は改善案を考えず、現状の動詞を書き出すだけでも十分です。

「一個の流れ」を動詞で記録する

一個または一回の作業を、最初から最後まで見ます。たとえば「部品を棚から取る→台へ置く→向きを変える→治具へ入れる→ボタンを押す→取り出す→完成箱へ置く」と書きます。細かすぎる秒単位の分析から始める必要はありません。

書き出したら、同じ物へ二度触れている箇所、手が元の場所へ戻る箇所、何も持たずに歩く箇所へ印を付けます。「置く→また取る」が続く場所は、仮置きをなくす候補です。「開ける→閉める」が毎回ある場所は、開いたまま保持できないか考えられます。

スマートフォンなどで動きを記録する場合は、職場の撮影ルール、製品情報、周囲の人への配慮を守ります。映像が難しければ、正の字で回数を数す、簡単な工程図を書く、別の人に一回だけ見てもらう方法でも構いません。

見つけやすい六つのサイン

  • 同じ品物を二度以上つかむ:仮置き、向き直し、検査後の移し替え
  • 手だけが往復する:離れたボタン、カウンター、工具、材料
  • 開けて閉める:キャップ、カバー、クランプ、扉
  • 一個ずつ同じことをする:取り出し、貼付、接触、数え直し
  • あとで並べ直す・分け直す:ページ、良品、空容器、種類
  • 元の位置へ戻すためだけに動く:工具、ふた、カバー、空箱

このサインが見つかっても、すぐに「ムダ」と決めつけないでください。置き直しが傷の検査を兼ねている、閉める動作が異物混入を防いでいるなど、見えない役割があるかもしれません。作業している仲間へ、「この動きは何を守っていますか」と聞くところから始めます。

改善候補を絞るチェックリスト

  • [   ] 一日に何度も繰り返す動作である
  • [   ] 同じ物へ二度以上触れている
  • [   ] 置き場所、向き、順番の変更で試せそう
  • [   ] 段ボール、テープ、仮の台などで小さく再現できる
  • [   ] 変更前に守る品質条件を言葉にできる
  • [   ] 危険源へ手や身体が近づく変更ではない
  • [   ] 前後の動作数を数えられる
  • [   ] 元へ戻せる範囲で試せる
  • [   ] 作業する仲間の身体負担が増えない
  • [   ] 次工程の手間を増やさない

最初の候補は、すべてにチェックが付く小さなものが向いています。特に、置き場所の線、箱の向き、原稿の順番のように、短時間で元へ戻せる案は比較しやすくなります。

一人の速さではなく工程全体を見る

自工程で一回減っても、次工程で二回増えたら全体では改善になりません。直接受け渡しの例なら、前工程の置きやすさと次工程の取りやすさを両方見ます。箱を横向きにする例なら、補充する人が重い箱を無理に持ち上げることにならないかも見ます。

動作数、歩数、待ち、持ち替え、取り違え、身体のひねりを、工程の前後で観察してください。部分の速さより、製品が入口から出口まで少ない動きで流れることを目標にすると、誰かへ負担を移す改善を避けやすくなります。

小さく試して定着させる7ステップ

良い改善案でも、思いついた日に全工程へ広げる必要はありません。むしろ、小さく試し、違いを見て、直してから広げるほうが、現場の知恵を生かせます。次の七段階なら、道具の少ない改善にも使えます。

ステップ1|対象を一つに絞る

「工場全体の動作を減らす」では大きすぎます。「ケースへ入れた後のカウンター操作」「完成品の仮置き」「コピー後の並べ直し」のように、一つの反復動作へ絞ります。頻度が高く、危険源へ影響せず、元へ戻しやすいものから始めます。

ステップ2|改善前の動きを記録する

一個を処理する間に、取る、置く、歩く、押す、戻すが何回あるか数えます。作業時間だけでなく、手の往復、持ち替え、待ち、身体のひねりも短く記録します。製品条件、ロット、作業場所もそろえておくと、後で比べやすくなります。

ステップ3|その動作の目的を確認する

なぜその位置へ置くのか、なぜ二か所をテープで止めるのか、なぜボタンを別に押すのかを確かめます。過去の不具合対策として加わった手順かもしれません。理由が分からない場合は、勝手に省かず、確認できる人や資料を探します。

ステップ4|四つの問いで案を出す

「なくせないか」「一緒にできないか」「順番を変えられないか」「もっと簡単にできないか」と問いを当てます。完成度の高い治具をいきなり作らず、段ボールの位置決め、仮の線、空箱、着脱できるストッパーなどで形を確かめます。

ステップ5|限定した範囲で試す

一時間、一定数量、一つの製品型式など、範囲を区切ります。試す前に中止条件も決めます。製品に傷が付く、数え違いが出る、手首が痛い、通路が狭い、設備の動きと干渉するなら、そこで止めて元へ戻します。

ステップ6|前後を同じ物差しで比べる

改善前と改善後で、動作数、処理時間、歩数、待ち、持ち替え、異常の有無を比べます。時間だけ短くなっても、数え間違いや身体負担が増えていれば採用しません。作業した仲間の「楽になった点」「やりにくくなった点」も記録します。

ステップ7|良い条件を見える形で残す

採用するなら、置き位置の線、写真、短い手順、点検箇所、使える製品条件を残します。「ここへ置く」だけでなく、「次工程が無理なく取り、良品と混ざらないため」と目的も添えると、条件が変わったときに見直せます。

改善は、一度で完成させる競争ではありません。小さく試し、違いを確かめ、現場の声で形を整える過程です。

改善記録の簡単な様式

項目記入例
対象動作製品投入後にカウンターへ手を伸ばす
改善前投入1回、カウンター操作1回、手の往復1回
仮説カウンターをケース入口へ近づければ往復を減らせる
守る条件一個につき一回だけ計数、手首が自然、ケース交換を妨げない
試す範囲一つの製品、一ロット
見る項目計数結果、処理時間、手の往復、違和感
結果実測後に記入
次の対応採用、条件修正、元へ戻す

結果欄を最初から空けておくことが大切です。良くなると決めつけず、現場で確かめる余地を残します。これが、思いつきを使える仕組みへ育てるコツです。

動作数を減らす改善でよくある質問

動作を一回にまとめる考え方は分かりやすい反面、「品質が落ちないか」「何から始めるか」という迷いも出ます。現場でよく生まれやすい疑問を整理します。

Q1.最初に選ぶなら、ランキング1位から始めるべきですか?

順位は参考になりますが、自分の現場で繰り返しが多く、安全や品質への影響が小さい動作を優先してください。1位の直接受け渡しが当てはまらなければ、コピー順や箱の向きのように、すぐ元へ戻せる案からで構いません。総合点より、発生頻度と試しやすさが大切です。

Q2.数秒の動作を減らすだけでも意味がありますか?

一回の短さだけでは判断できません。一日の回数、関わる人数、身体のひねりや歩行、次工程の待ちまで見ます。頻度が高ければ候補になり、頻度が低く確認が複雑なら後回しでよいでしょう。まず回数を数し、工程全体で比べてください。

Q3.テープや確認動作を減らすと、品質が心配です

心配があるのは自然です。減らす前に、その動作が守る条件を明確にします。テープなら封かん強度と輸送条件、数量確認なら数え違い、カバーなら異物や接触の防止です。条件を保てる別の仕組みを試し、限定範囲で結果を確認してから広げます。

Q4.改善後に作業が速くなったのに、現場では不評です

時間以外の負担が増えていないか見直します。材料が近すぎて窮屈、箱を持ち上げる回数が増えた、手首の角度が不自然、次工程の置き場が狭いといったことがあります。処理時間だけでなく、姿勢、持ち替え、迷い、異常時の戻しやすさを聞いてください。

Q5.専用治具は、すぐ作ったほうがよいですか?

まず仮の仕掛けで考え方を確かめるのがおすすめです。端子治具や刻印設備のように精度や安全へ関わるものは、適切な設計と確認が必要です。段ボールや着脱できる部材で位置関係を見たあと、必要な強度、精度、材質、点検方法を決めます。

Q6.改善効果は何を測ればよいですか?

基本は、動作数、処理時間、歩数、持ち替え、手待ち、異常の有無です。身体の負担は、手首の曲がり、前屈、ひねり、持ち上げ重量、作業後の違和感も見ます。品質は数え違い、傷、接触不良、封かん状態など、改善案ごとの条件を選びます。

Q7.良い改善を他工程へ広げるときの注意はありますか?

仕組みを横展開し、寸法や条件をそのままコピーしないことです。「投入とカウントを結び付ける」という原理は広げられても、カウンター位置は製品や人によって変わります。各工程で守る条件を確認し、再び小さく試します。

Q8.改善案がなかなか出ないときはどうしますか?

案を考える前に、同じ物へ何回触れたかを書いてみてください。「置いてまた取る」「開けてまた閉める」「終わってから並べ直す」が見つかれば、問いが生まれます。作業している仲間へ、最も面倒な往復と、なくなると助かる一動作を聞くのもよい方法です。

まとめ|明日は一つの「戻す動作」から見直してみよう

「何度もやる」を「1回で済ませる」改善の狙いは、作業者に急いでもらうことではありません。別々の動作を一つへまとめる、必要数を同時に処理する、取り外しと元に戻す作業をなくす、順番を変えて後工程を消す。こうした仕組みの工夫で、仕事をラクにすることです。

今回の10選では、次工程の手元へ直接置く、箱を横向きにしてまとめて取り出す、ケースへ入れながら数える、レバーで一度に開閉する、カバーを開いたまま保持するなど、身近な着眼点を紹介しました。作業は違っても、共通する問いは同じです。

この「取る・置く・押す・戻す」は、本当に別々に必要だろうか。

改善を始めるときは、順位の高い案をそのまま導入するのではなく、自分の現場で繰り返しが多く、元へ戻しやすい動作を一つ選びます。改善前の回数と目的を記録し、守る品質・安全条件を決め、限定した範囲で試してください。時間が短くても、負担や異常が増えるなら条件を直します。

明日、作業を一つだけ見てみませんか。特に「使ったあと元へ戻す」「仮に置いてまた取る」という動作は見つけやすい候補です。その一回を減らせる置き場所、向き、保持方法を、現場の仲間と一緒に考えてみてください。

5S活動や現場改善を、自社の作業に合わせてどう進めるか迷う場合は、5S-CONCEPTへご相談ください。現場の努力を速さで押すのではなく、少ない動きで安全に流れるしかけ作りから、次の一歩を一緒に考えます。

この記事を書いた専門家

 大手総合電機メーカーで20年間経験を積んで平成22年に独立。16年間で900社を超える中小企業支援、そして自らも小売業を立ち上げて業績を安定させた実績を持つ超現場主義者。小さなチームで短期的な経営課題を解決しながら、中長期的な人材育成を進める「プロジェクト型課題解決(小集団活動)」の推進支援が支持を集めている。

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