この記事では、5S=整理・整頓・清掃・清潔・習慣(しつけ)の考え方を使い、棚の整理を探す・取る・戻すムダを減らす仕掛けへ変える進め方を、現場写真と8つの改善事例で紹介します。
- 不要品を先に外し、棚に余白をつくる
- 使用頻度に合わせて、よく使う物を取りやすい位置へ移す
- ラベル・区画・写真で、戻す場所を自然に分かる形にする
- 清掃と補充までラクにできる棚へ育てる
写真で見る棚整理|不要品を外して探す・戻すムダを減らした事例
まずは、このページのきっかけになった改善から見ていきましょう。新しい棚を買う前に、使っていない物を外して配置を整えただけでも、毎日の出し入れは軽くなります。
【ビフォー】

【アフター】

【結果/効果】
(なにが)
入らない物を廃棄し、棚の整理を行った。
探すムダ・戻すムダ
(どうなった)
1日平均で10秒短縮×月間の発生日数12日
1カ月あたり:120秒削減
金額効果:120円削減
【専門家コメント】
改善前は棚の周囲が雑然として
必要な物の出し入れに手間がかかる
状態だったとのこと。そこに目をつけて、
不要な物をしっかり廃棄し、棚の整理整頓を
徹底的に実施してくれた改善ですね。
探す手間がなくなることで作業の効率も上がり、
戻す場所が決まっていることで乱れも防げる、
とても効果的な改善だと思います。
ありがとうございました。
そして次に考えてみたいのは、
「なぜこのような状態になっていたのか?」
という点です。
・置き場所が決まっていなかった
・戻すルールが曖昧だった
・誰が使っても良いような共有棚だった
などの理由があったかもしれません。
これを防ぐためには、
・棚にラベルや表示を明確につける
・一目でモノの定位置がわかるようにする
・使ったら戻す仕組みを周知する
といった整頓のルールづくりが大切です。
今回の改善をベースに、さらに一歩進んだ
“乱れが起きない仕組み”をぜひ考えてみてください。
次なる改善報告も楽しみにしています。
棚整理・整頓を4段階で進めると、乱れが戻りにくい
棚改善は、いきなりラベルを貼るところから始めると、不要な物の置き場所まで固定してしまうことがあります。次の順番なら、今ある棚や容器を活かしながら試せます。
1.使っていない物を外し、必要な量を決める
最初に見るのは、汚れよりも「この棚に本当に必要か」です。期限切れ、重複品、壊れた治具、用途の分からない物を分け、迷う物は保留箱へ。すぐ捨てるかどうかで揉めるより、判断期限を決めて一時退避すると進めやすくなります。
2.使用頻度と動線に合わせて置く高さを変える
毎日使う物は腰から肩の間、重い物は低い位置、たまに使う物は上段へ。使う場所から遠い棚なら、棚の中だけでなく棚そのものの位置も見直します。手を伸ばす、しゃがむ、振り返る回数が減ると、棚整理がそのまま作業改善になります。
3.ラベル・区画・写真で「戻す答え」を棚に持たせる
人に覚えてもらうより、棚を見れば分かる形にします。品名だけで足りなければ、品番、最大・最小量、完成形の写真まで表示します。ダメ出しをしなくても自然に戻せる棚なら、現場のみんなが素早く動けます。
4.補充・清掃・点検のしやすさまで確かめる
取りやすさだけでなく、在庫切れに気づけるか、棚板を拭きやすいか、異常品が混ざらないかも確認します。整理・整頓の後に清掃と補充の仕掛けまでつながると、片づけ直す回数を減らせます。
困りごと別|工場とオフィスの棚改善事例8選
棚の困りごとは、物を減らすだけで解決するもの、表示が効くもの、動線や在庫量まで見直した方がよいものに分かれます。自分たちの棚に近い事例から、使えそうな工夫を一つ拾ってみてください。
| 困りごと | 棚改善事例 | 横展開できる工夫 |
|---|---|---|
| 不要品が棚を占領する | このページの棚整理事例 | 保留箱と判断期限を設ける |
| 部品の場所が分からない | 部品棚の整理と表示 | 棚番・品名・区画をそろえる |
| 工具を探してしまう | ドリルとタッパーの置き場整理 | 用途別にまとめて定位置化する |
| 棚の表示が曖昧 | 部品置き場の棚に表示 | 初めて見る人にも分かる名称にする |
| 在庫量をつかみにくい | 棚板関係の在庫管理 | 最大・最小量と補充点を表示する |
| 書類が混ざる | 書類保管棚の引き出し内整理整頓 | 分類名と保管期限をそろえる |
| 複数の棚で表示がばらつく | 各棚の見える化 | 表示の色・位置・書式を統一する |
| 棚の清掃に時間がかかる | 棚の清掃時間の短縮 | 動かす物を減らし、拭きやすくする |
備品置き場が足りないときは、棚を増やす前に「出す」と「上限」から
備品置き場が足りないと感じたら、棚を買い足す前に、いらない物を出すことと、持つ量の上限を決めることから始めると、空いた場所が元に戻りにくくなります。
「置き場が足りないから、棚をもう一台」。よく聞く話です。
棚を一台、買い足した。
半年たって、そこも一杯。
足りなかったのは、場所ではなかった。
多くの現場で足りないのは、置き場そのものより、物が増える入口を止める決まりです。当社の5Sでいう整理は「不要なモノが探しても存在しない現場を目指す活動」です。まず出す、次に上限を決める。この順番で進めます。
| 打ち手 | やること | 参考になる事例 |
|---|---|---|
| ① いらない物を出す(整理) | しばらく使っていない物に札を付け、置き場の外へ出す | 備品棚の不要な段ボール箱・バケツを処分(Dランク)/クランパーなど使わない備品を整理(Dランク) |
| ② 残す物を分けて、見える形にする(整頓) | 必要な物を種類ごとにケースへ入れ、どこに何があるかをシールで示す | 備品置場の整理・整頓(Cランク) |
| ③ 持つ量の上限を決める(定量) | 在庫を数え直し、ムダな買い足しで積み上がった分を減らす | 材料在庫の削減で倉庫の保管スペースを確保(Aランク) |
| ④ 「移しただけ」で終わらせない(清潔) | 移した先を決まった日に見回り、使わない物は捨てる決まりにする | 不必要な在庫の整理(Cランク) |
事例から見えること
備品棚の段ボール箱やバケツを処分した事例では、棚の中が完全に空き、新しいスペースが生まれました。それでも評価はDランクです。空いた状態を保つ決まりが、まだないからです。
不必要な在庫を片付けた事例では、専門家が「在庫を移動しただけで、会社全体としてスペースが空いたわけではない」という趣旨のコメントをしています。こちらの置き場は空いても、別の場所が埋まっていれば、足りない問題はそのまま残ります。
材料在庫を減らしたAランクの事例は、棚卸しの数え方を正確にして、ムダな購入そのものを止めました。物を出しただけでなく、増える入口をふさいだ点が評価されています(改善報告の試算で、探す時間が1日平均300秒短縮)。
それでも足りないとき
①〜④を済ませても足りなければ、置き方を見直します。
- 部署ごとに分かれた置き場を、1か所にまとめる
- めったに使わない物は、部署どうしで共有する
- 棚の上段など、空いている高さを使う(重い物は下に)
順番を逆にすると、増やした場所が、また物で埋まります。
明日の一手
備品置き場の棚を一段だけ選び、しばらく使っていない物に札を付けてみてください。空いた幅を測っておくと、次に「置き場が足りない」と言われたとき、棚を買うかどうかを話し合う材料になります。
棚改善を横展開するときのチェックリスト
- 用途が分からない物や長期間使っていない物が残っていないか
- 使用頻度の高い物が、取りやすい高さと距離にあるか
- 品名・品番・数量を棚の正面から確認できるか
- 物を持った片手でも、取り出して戻せるか
- 空きと欠品を見ただけで判断できるか
- 棚板や床を、物を大量に動かさず清掃できるか
- 現場のみんなが同じ戻し方を選べる仕掛けになっているか
5S改善評価
(1)成果の大きさ:A(16点)
理由:
棚の周囲にあった不要物を撤去し、出し入れしやすい状態に整えたことで、探す手間の削減・作業効率の向上・職場の見た目改善という複数の効果が得られています。特に、乱雑だった共有スペースの改善は影響範囲が広いため、A評価としました。
(2)改善の独自性:C(8点)
理由:
棚の整理整頓は5S活動の中でも基本的かつ定番の改善テーマです。内容としても、特に珍しい手法やユニークな工夫は記載されていないため、独自性は平均的(C評価)と判断しました。
(3)改善の難易度:B(12点)
理由:
「不要物の廃棄+棚の整理整頓」の作業には、現状の確認・仕分け・処分・配置の見直しなど、一定の手間と時間(30分~1時間程度)が必要です。短時間では難しい内容と見られるため、B評価です。
(4)清潔レベル:C(8点)
理由:
現時点では、棚の整頓は行われたものの、再発防止のための表示や仕掛け(ラベル・輪郭表示など)についてはまだ不明です。「戻すべき場所を明確にする視覚管理」や、「誰でも使えるようにする定位置表示」などがあれば、A評価以上が狙えます。
(5)習慣レベル:C(8点)
理由:
棚の乱れが再発しないためには、戻すルールや運用の周知、点検・指導の仕組みが必要ですが、現状ではそれらの仕組み化までは至っていないと判断されます。標準化・ルールの共有化が次のステップになります。
総合評価
- 合計点数:52点
- 5Sレベル:B
今回の改善の区分
- ①改善の種類: 整理+整頓
- ②改善場所: 工場
- ③改善対象: 棚/備品置き場
🔍 アドバイス:
今回の改善は、「整理」と「整頓」の両方を実行した基礎力のある5S改善です。次のステップとしては、乱れを防ぐ“見える化”と“習慣化の仕掛け”がポイントになります。
具体的には:
- ラベル表示の徹底
- 戻す位置を輪郭や写真で明確に
- 定期点検のルール化
こうした対策を加えることで、清潔・習慣レベルが上がり、5SレベルA〜Sへの到達が見えてきます。今後のさらなる改善にも期待しています。



