この事例は、設備の隙間に挟んであった説明書を置場に戻した整頓事例で、専門家評価はDランク(24点)。戻す行為を、二度と起きない仕組みに変えるのが課題。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改善の種類 | 整頓 |
| 改善場所 | 工場 |
| 改善対象 | 書類(設備の取扱説明書) |
| 専門家評価 | Dランク(24点。Dは30点以下) |
| 効果 | 設備の説明書を置場に戻し、スッキリした(改善報告の記載) |
改善前の状態(Before)
設備の取扱説明書が、設備の隙間に挟み込まれた状態でした。本来の置き場には、置かれていませんでした。

改善内容(After)
設備の説明書を、本来の置場に戻しました。本来あるべき場所に戻したので、スッキリしたという感覚があったようです。

専門家コメント
設備の取扱説明書を設備の隙間に挟み込んでいた状態を、本来の置き場に戻した改善ですね。本来あるべき場所に戻したので、スッキリしたという感覚があったようです。まずは気分がよくなるような改善、お疲れさまでした。たしかに、あるべき場所に戻したことを、改善として認識できるかもしれません。
しかし、本来の場所に戻すのは当たり前であって、改善と呼ぶには少しつらいものがあります。改善とは「悪いところを改めてよくすること」を言います。やり方を改めてはいない今回の報告は、改善報告としては、ふさわしくないと判断できます。つまり改善とは、このような状況が起きないよう、何かを変える行動が必要です。
改善報告とは、発想力を伸ばす仕組みであり、ただ片づけたことに意味はありません。今後の報告では、ぜひ捉え方を改めたうえで、あなたの素晴らしい発想でご報告をいただくことを楽しみにしています。
5S改善評価:合計24点(Dランク)
今回の改善を、5つの項目で辛口に評価しました。
| 評価項目 | 評価 | 点数 |
|---|---|---|
| (1)成果の大きさ | D | 4点 |
| (2)改善の独自性 | D | 4点 |
| (3)改善の難易度 | D | 4点 |
| (4)清潔レベル | C | 8点 |
| (5)習慣(しつけ)レベル | D | 4点 |
| 合計 | D | 24点 |
(1)成果の大きさ:D(4点)
理由:説明書が置場に戻り、スッキリした点は評価できる。ただし、探す時間の削減など、仕事への効果は報告に書かれていない。「成果は比較的小さい改善」と評価する。
(2)改善の独自性:D(4点)
理由:本来の置場に戻すのは、当たり前の行動。やり方を改めた改善ではなく、「誰でも思いつく改善」と評価する。
(3)改善の難易度:D(4点)
理由:説明書を置場に戻すだけで、特別な準備や技術は要らない。「数分でできた改善」と評価する。
(4)清潔レベル:C(8点)
理由:本来の置場が決まっているため、戻せる状態にはなっている。ただし、置場や戻し方の表示がなく、隙間に挟む状況を防ぐ仕組みもない。何かのきっかけで、また挟み込まれる。「何かのきっかけで再発する改善」と評価する。
(5)習慣(しつけ)レベル:D(4点)
理由:使った後は置場に戻す、というルールや周知の記述がない。「習慣化を促さない単発的な改善」と評価する。
Dランクから上位ランクに上げる工夫と考え方
説明書が置場に戻ったのは、良い出発点です。上のランクに進むために必要なのは、もう一度戻すことではありません。説明書が、設備の隙間に挟まれる状況が起きない仕組みをつくることです。
点数で見る「上げ方」
24点のこの事例は、清潔がC(8点)、習慣がD(4点)です。習慣だけを1段階上げても28点で、Dのままです。
| 上げ方 | 清潔 | 習慣 | 合計 | ランク |
|---|---|---|---|---|
| 現在 | C(8点) | D(4点) | 24点 | D |
| 習慣を1段階上げる | C(8点) | C(8点) | 28点 | D |
| 清潔・習慣を1段階ずつ上げる | B(12点) | C(8点) | 32点 | C |
| 清潔・習慣をともにAまで上げる | A(16点) | A(16点) | 44点 | C |
清潔と習慣は仕組みで上げられる項目です。両方を1段階ずつ上げればCランクに届きます。Bランクを目指すには、成果や独自性も高める改善が必要です。
清潔レベルのカギは「未然防止」
整理・整頓・清掃は、放っておくとモグラ叩きになりがちです。説明書の置き場所も、乱れてから戻す「後追い」になりがちです。挟み込まれたら戻す。またしばらくすると挟まれる。これでは、戻した後でまた同じ状態になります。
この評価基準では、清潔レベルの最高位は「問題を未然に防止できる仕組み」です。「元の場所に戻す」「気をつける」に頼らず、挟み込みたくても挟み込めない、戻しやすい仕組みにすること。私たち評価者が支援現場で強く感じるのは、多くの中小製造業の現場で、この「不具合が起きない仕組み」まで考える視点が不足していることです。
この事例に当てはめると、次のようになります。
| 起こりうる不具合 | 後追いの対応(Dの発想) | 未然防止の仕組み(例) |
|---|---|---|
| 説明書が、また隙間に挟まれる | 見つけた人が置場に戻す | 本来の置場を表示し、置いてあったところにも「本来の場所」を表示する(専門家の例) |
| 置場が遠くて、戻すのが面倒になる | 戻すよう声をかける | 使用頻度が多いなら、今ある場所を本来の置場に変える(専門家の例) |
| 説明書の実物を探す手間がかかる | 探して見つかるまで待つ | スキャンして電子化し、QRコードを貼って、すぐ呼び出せるようにする(専門家の例) |
| 説明書がなくなる、どれか分からない | なくなってから探す | 置場に設備名の表示を付け、空いていたら戻し忘れと分かるようにする(例) |
上の表は例です。専門家も、置場の表示、置場の変更、電子化とQRコードなどの発想を挙げています。右の列の発想で、「この整頓が崩れる原因」を先に洗い出し、起きる前に手を打つことが清潔レベルを上げます。
習慣(しつけ)レベル:単発の改善から「皆が守る標準化」へ
習慣(しつけ)は、清潔で見つけた良いやり方を標準化する活動です。習慣レベルを上げるには、一人の工夫を、全員が同じように行うルールにします。
- 説明書の置場と、使ったら戻すことを、置場の近くに掲示する
- 新しく入った人にも分かるよう、置場の表示の意味を周知する
- 点検の日を決めて、説明書が置場にあるかを確認する
次の改善報告で期待すること
専門家は、次の点を考えるよう求めています。
- 本来あるべき置場はどこか、そこに表示をする
- 置いてあったところに、本来の場所の情報を表示する
- 使用頻度が多いなら、今ある場所を本来の置場に変える
- 置場に戻せないなら、スキャンして電子化し、QRコードで呼び出せるようにする
次の報告では、こうした発想で「やり方を改めた」取り組みを期待しています。
関連する5S活動の事例
あわせて読みたい、関連する事例です。



