この事例は、工場で正しくなかった消火器の明示を直し、周辺も掃除した整頓事例で、専門家評価はDランク(28点)。原因を断つルールが課題。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改善の種類 | 整頓 |
| 改善場所 | 工場 |
| 改善対象 | 工具/備品(消火器) |
| 専門家評価 | Dランク(28点。Dは30点以下) |
| 効果 | 消火器の場所が誰にでも分かる状態に戻った(専門家コメントより。改善報告に数値の記載なし) |
改善前の状態(Before)
消火器の明示が、正しくありませんでした。専門家は、消火器表示の矢印が消火器の下を向いている状態だった、と述べています。

改善内容(After)
明示の仕方を正しく修正しました。それと同時に、消火器周辺の掃除も行いました。何かあったときに、来客でも、今日来た新人でも、消火器の場所が分かる状態に戻りました。

専門家コメント
たしかに、消火器表示の矢印が消火器の下を向いていて、気持ち悪いですよね(笑)。本来あるべき箇所に戻してくれて、ありがとうございました。これで何かあったときに、たとえ客人でも、今日来た新人でも、場所が分かると思います。
そのうえで、次に考えてほしいのは、なぜこんな状態になったのか、ということです。おそらく何かのきっかけで、この表示は下に落ちてしまったのでしょう。そして、そのまま長い間放置されていた。なぜ放置されていたのか。誰も気がつかなかったのか。問題意識がなかったのか。
誰もが対処しようとしない状態から、誰もが対処しようとする状態にするには、どんな改善が必要でしょうか。大きくは、答えは次の3つです。①自分の役目でないと思った、②問題として認識していなかった、③問題を見つける習慣がなかった。
①は、忙しければやりません。②は、認識しなければ対処しなくてよいことになります。③は、問題発見パトロールなどの仕組みがなければ、いつまでたっても問題だと思わないですよね。その改善がなければ、この状態はまた起こります。
そのため、次なる改善は、新たなルールを設定して、二度と発生しない仕組みづくりを進めてください。
5S改善評価:合計28点(Dランク)
今回の改善を、5つの項目で辛口に評価しました。
| 評価項目 | 評価 | 点数 |
|---|---|---|
| (1)成果の大きさ | C | 8点 |
| (2)改善の独自性 | D | 4点 |
| (3)改善の難易度 | D | 4点 |
| (4)清潔レベル | C | 8点 |
| (5)習慣(しつけ)レベル | D | 4点 |
| 合計 | D | 28点 |
(1)成果の大きさ:C(8点)
理由:消火器の場所が誰にでも分かる状態に戻り、何かあったときに役立つ点は評価できる。ただ、効果を示す数値は改善報告になく、成果は限定的。「成果がややもの足りない改善」と評価する。
(2)改善の独自性:D(4点)
理由:正しくない表示を、正しい位置に直す改善で、特に目新しさはない。誰でも思いつく取り組みである。「誰でも思いつく改善」と評価する。
(3)改善の難易度:D(4点)
理由:表示を正しい位置に直し、周辺を掃除する作業で、特別な技術や設備は要らない。「数分でできた改善」と評価する。
(4)清潔レベル:C(8点)
理由:専門家の見立てでは、何かのきっかけで表示が下に落ち、そのまま長い間放置された。同じことが、また何かのきっかけで起こりうる。「何かのきっかけで再発する改善」と評価する。
(5)習慣(しつけ)レベル:D(4点)
理由:問題を見つけるパトロールなど、表示の状態を確かめる仕組みは、改善報告に記載がない。専門家が課題として挙げている、単発の改善といえる。「習慣化を促さない単発的な改善」と評価する。
Dランクから上位ランクに上げる工夫と考え方
この改善は、直したことよりも「なぜ放置されたか」を掘り下げられるかが鍵です。上のランクに進むために必要なのは、表示をもう一度直すことではありません。この仕組みが、この先も崩れないようにすることです。
点数で見る「上げ方」
28点のこの事例は、改善そのものの中身(成果・独自性・難易度)を変えなくても、維持の2項目(清潔・習慣)を上げるだけでランクが上がります。
| 上げ方 | 清潔 | 習慣 | 合計 | ランク |
|---|---|---|---|---|
| 現在 | C(8点) | D(4点) | 28点 | D |
| 清潔・習慣を1段階ずつ上げる | B(12点) | C(8点) | 36点 | C |
| 清潔・習慣をともにAまで上げる | A(16点) | A(16点) | 48点 | B |
成果や独自性を上げるには新しい発想や時間が要りますが、清潔と習慣は仕組みで上げられる項目です。「あと3点」でCランク、清潔と習慣をAまで整えればBランクに届きます。
清潔レベルのカギは「未然防止」
整理・整頓・清掃は、放っておくとモグラ叩きになりがちです。表示が落ちていたら、気づいた人が直す。これは、起きてから直す「後追い」です。今回のように長く放置されると、緊急のときに場所が分からないという、大きな問題になりかねません。
この評価基準では、清潔レベルの最高位は「問題を未然に防止できる仕組み」です。「気をつける」「声をかける」に頼らず、表示が落ちにくく、落ちても誰かがすぐ気づく構造・配置・仕組みにすることです。私たち評価者が支援現場で強く感じるのは、多くの中小製造業の現場で、この「不具合が起きない仕組み」まで考える視点が不足していることです。
この事例に当てはめると、次のようになります。
| 起こりうる不具合 | 後追いの対応(Dの発想) | 未然防止の仕組み(例) |
|---|---|---|
| 表示が落ちる、ずれる | 気づいた人が直す | 表示を、落ちにくい方法で固定する。消火器の位置を床にも表示し、ずれに気づきやすくする(例)。消火設備に関わるため、設備・安全の担当者と確認する |
| 表示の異常に、誰も気づかない | 気づいた人が、気づいたときに直す | 専門家が挙げる問題発見パトロールを定期的に行う。点検表に「消火器の表示」を入れて、確認の抜けをなくす(例) |
| 「自分の役目でない」と思って放置される | 声をかけて、お願いする | 消火器まわりの確認を場所ごとの担当に決める。見つけた人が報告する経路を、決めておく(例) |
| 消火器の前に物が置かれる | 気づいたときに片づける | 消火器の前は物を置かない範囲を、床に表示する(例)。範囲内に物があれば、パトロールで見つけて戻す |
上の表は例です。消火器や表示の固定方法は、消防に関わる決まりもあるため、設備・安全の担当者と確認して決めてください。専門家が挙げた3つの理由の、どれが自分の職場に近いかを話し合うことが、最初の一歩です。
習慣(しつけ)レベル:単発の改善から「皆が守る標準化」へ
習慣(しつけ)は、清潔で見つけた良いやり方を標準化する活動です。習慣レベルを上げるには、一人の工夫を、全員が同じように行うルールにします。
- 消火器の表示と置き場の状態を、点検表に入れて定期的に確認する
- 問題を見つけたら、誰が見つけても報告する、という約束を周知する
- 新しい人が入ったときに、消火器の場所と表示の意味を伝える
次の改善報告で期待すること
専門家は、次の改善の方向を次のように示しています。
- なぜ表示が下に落ちたまま放置されたのか、原因を考える
- 誰もが対処しようとする状態にする改善を考える
- 新たなルールを設定して、二度と発生しない仕組みづくりを進める
あなたからの、新しい改善報告を楽しみにお待ちしています。
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