この事例は、工場の作業台を整理して物を取りやすくした整理事例で、専門家評価はDランク(28点)。片づけは進んだが、必要・不要の判断基準づくりが次の課題。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改善の種類 | 整理 |
| 改善場所 | 工場 |
| 改善対象 | 工具/備品(作業台の上の物) |
| 専門家評価 | Dランク(28点。Dは30点以下) |
| 効果 | 物が取りやすくなった(改善報告の記載) |
改善前の状態(Before)
作業台の状態について、元の報告に具体的な説明はありません。「物が取りやすくなった」という結果から、改善前は物が取りにくい状態だったと考えられます。

改善内容(After)
作業台を整理し、物が取りやすくなりました。専門家は、整理というタイトルと「取りやすくなった」という感想から、不用品を処分したのだろうと読み取っています。

専門家コメント
改善前と改善後の作業台は、同じではないですね。そうであれば、言葉の表現からも、何を改善したのかがわからない改善報告になってしまっています。
ただ、整理をしたというタイトルと、物が取りやすくなったという感想から、不用品を処分したことがうかがえます。まずは作業をしやすくしていただき、ありがとうございました。
ただしこれは、片づけた報告になっています。そこで考えてほしいのが、判断基準です。今回の改善では、必ず必要品と不用品を判断したはずです。どんな判断基準でしたか。それはあなた独自のものでしょうか。大切なのは、チームとして、組織として、この判断基準があるかないかです。
もしないのであれば、個人の判断で、本来あるべき物を処分してしまったり、本来不要な物が残っていたりする可能性が高い状態です。それをチームとして、組織として取り組んでいくことが、本来の整理活動の姿であり、組織の改善力を高める取り組みになり得る構造のひとつです。
5S改善評価:合計28点(Dランク)
今回の改善を、5つの項目で辛口に評価しました。
| 評価項目 | 評価 | 点数 |
|---|---|---|
| (1)成果の大きさ | C | 8点 |
| (2)改善の独自性 | D | 4点 |
| (3)改善の難易度 | C | 8点 |
| (4)清潔レベル | D | 4点 |
| (5)習慣(しつけ)レベル | D | 4点 |
| 合計 | D | 28点 |
(1)成果の大きさ:C(8点)
理由:物が取りやすくなり、作業がしやすくなった点は評価できる。ただし、何をどれだけ処分し、どのくらい作業が楽になったのかが報告から読み取れない。「成果がややもの足りない改善」と評価する。
(2)改善の独自性:D(4点)
理由:作業台の上の不用品を処分して片づけるのは、整理の基本的な取り組み。「誰でも思いつく改善」と評価する。
(3)改善の難易度:C(8点)
理由:必要品と不用品を仕分けて処分する作業は、一定の手間がかかる。ただし、特別な技術や大きな時間は要らない。「そんなに時間をかけない改善」と評価する。
(4)清潔レベル:D(4点)
理由:判断基準が組織として共有されていないため、時間がたつと不用品がまた増え、必要な物を誤って処分するおそれも残る。「すぐ乱れる改善」と評価する。
(5)習慣(しつけ)レベル:D(4点)
理由:個人の判断で片づけた報告にとどまり、皆が守るルールになっていない。「習慣化を促さない単発的な改善」と評価する。
Dランクから上位ランクに上げる工夫と考え方
この改善は「片づいた」ところで止まっています。上のランクに進むために必要なのは、もう一度片づけることではありません。誰が整理しても同じ結果になる判断基準を、皆で持つことです。
点数で見る「上げ方」
28点のこの事例は、成果・独自性・難易度を変えなくても、維持の2項目(清潔・習慣)を上げるだけでランクが上がります。
| 上げ方 | 清潔 | 習慣 | 合計 | ランク |
|---|---|---|---|---|
| 現在 | D(4点) | D(4点) | 28点 | D |
| 清潔・習慣を1段階ずつ上げる | C(8点) | C(8点) | 36点 | C |
| 清潔・習慣をともにAまで上げる | A(16点) | A(16点) | 52点 | B |
清潔と習慣は仕組みで上げられる項目です。「あと3点」でCランク、整えればBランクに届きます。
清潔レベルのカギは「未然防止」
整理・整頓・清掃は、放っておくとモグラ叩きになりがちです。作業台も、散らかってから片づける「後追い」になりがちです。物が増えたら片づける。またしばらくすると増える。これでは、片づけた後でまた同じ状態になります。
この評価基準では、清潔レベルの最高位は「問題を未然に防止できる仕組み」です。「気をつける」「その都度、自分で判断する」に頼らず、不用品が溜まりようがない仕組みにすること。私たち評価者が支援現場で強く感じるのは、多くの中小製造業の現場で、この「不具合が起きない仕組み」まで考える視点が不足していることです。
この事例に当てはめると、次のようになります。
| 起こりうる不具合 | 後追いの対応(Dの発想) | 未然防止の仕組み(例) |
|---|---|---|
| 人によって必要・不要の判断が違う | その場にいる人が自分の判断で決める | チームで必要・不要の判断基準を決めて文書にし、作業台の近くに掲示する(例) |
| 必要な物を誤って処分する | なくなってから探す、買い直す | 判断に迷う物は、すぐに捨てず一時保管の場所に置き、期限を決めて関係者で確認する(例) |
| 不要な物が作業台に残り続ける | 物が増えてから片づける | 作業台に置いてよい物の種類と数を決めて表示し、それ以外は置かない(例) |
| 片づけた効果が見えず、続かない | 気づいた人が手直しする | 処分した物と、取りやすくなった点を記録して、関係者に共有する(例) |
上の表は例です。専門家は、組織としての必要・不必要の判断基準を設けるよう求めています。右の列の発想で、「この整理が崩れる原因」を先に洗い出し、起きる前に手を打つことが清潔レベルを上げます。
習慣(しつけ)レベル:単発の改善から「皆が守る標準化」へ
習慣(しつけ)は、清潔で見つけた良いやり方を標準化する活動です。習慣レベルを上げるには、一人の判断を、全員が同じように行うルールにします。
- 必要・不要の判断基準を書き出し、誰が見ても同じ判断ができるようにする
- 新しく入った人にも分かるよう、基準を周知する
- 整理の日を決め、基準どおりに行われているかを点検する
次の改善報告で期待すること
専門家は、次の点を考えるよう求めています。
- 必要品と不用品を、どんな判断基準で決めたのか
- その基準は、あなた独自のものか、チームや組織のものか
- 改善前と改善後の写真と説明が対応していて、何を改善したのかが伝わるか
次の報告では、個人の判断ではなく、組織としての判断基準を設けた整理を期待しています。
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