この事例は、工場のプレス機周りの油汚れを掃除してきれいにした清掃事例で、専門家評価はDランク(28点)。放置の原因を断つ仕組みが課題。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改善の種類 | 清掃 |
| 改善場所 | 工場(プレス機の周り) |
| 改善対象 | 設備(プレス機) |
| 専門家評価 | Dランク(28点。Dは30点以下) |
| 効果 | プレス機の周りがきれいになった(改善報告に数値の記載なし) |
改善前の状態(Before)
プレス機の裏には、汚れ防止用の段ボールが敷いてありました。その段ボールは、油汚れでボロボロになりながら、長い間そのまま放置されていました。

改善内容(After)
プレス機の周りを掃除して、きれいになりました。専門家は、誰も手を付けなかった問題を見つけて実施したことに感謝している、と述べています。

専門家コメント
プレス機の裏には汚れ防止用の段ボールが敷いてありましたが、長い間、油汚れでボロボロになりながらも、そのまま放置されていました。この状態を問題ととらえて、しっかり改善していただきました。誰も手を付けなかった改善を、よくぞ見つけて実施してくれました。まずはその功績に感謝を述べたいと思います。ありがとうございました。
次のステップとして考えてほしいのは、なぜ長期間、そのような状態が放置されていたのか、ということです。しっかり手入れされた職場であれば、こんな状態にはならないはずです。
理由は、次のようなことが想像できます。理由1:汚れカバーが段ボール製だから、汚れやすい。理由2:油が落ちたら清掃すべきだが、やらない常識がまかり通っていた。理由3:定期的に清掃する決まりがなかった。おそらく、職場にいる人なら、どれがもっとも真の理由に近いか分かりますよね。
だとすると、対処1:カバーを樹脂製、あるいは金属製に変更してみる。対処2:作業終了後に設備周りのチェックを標準化する。対処3:定期的に清掃するルールを設定して、現場に明記する。などが考えられます。どれも、できない話ではないですよね。
5S改善評価:合計28点(Dランク)
今回の改善を、5つの項目で辛口に評価しました。
| 評価項目 | 評価 | 点数 |
|---|---|---|
| (1)成果の大きさ | C | 8点 |
| (2)改善の独自性 | D | 4点 |
| (3)改善の難易度 | C | 8点 |
| (4)清潔レベル | D | 4点 |
| (5)習慣(しつけ)レベル | D | 4点 |
| 合計 | D | 28点 |
(1)成果の大きさ:C(8点)
理由:長い間放置されていた油汚れを見つけて掃除し、プレス機の周りがきれいになった点は評価できる。ただ、汚れの量や清掃時間などの数値は改善報告になく、成果は限定的。「成果がややもの足りない改善」と評価する。
(2)改善の独自性:D(4点)
理由:油で汚れた設備の周りを拭き掃除するのは、清掃の基本的な進め方で、特に目新しさはない。「誰でも思いつく改善」と評価する。
(3)改善の難易度:C(8点)
理由:油汚れの拭き掃除は、汚れの程度に応じた手間はかかる。ただ、特別な技術や設備は要らない。「そんなに時間をかけない改善」と評価する。
(4)清潔レベル:D(4点)
理由:専門家が挙げるとおり、汚れカバーが段ボール製で汚れやすいこと、清掃の決まりがないことなどが残っている。掃除しても、油が落ちれば、すぐ乱れる。「すぐ乱れる改善」と評価する。
(5)習慣(しつけ)レベル:D(4点)
理由:作業終了後に設備周りをチェックする標準化や、定期的な清掃ルールは、改善報告に記載がない。専門家が今後の課題として挙げている、単発の改善といえる。「習慣化を促さない単発的な改善」と評価する。
Dランクから上位ランクに上げる工夫と考え方
この改善は、誰も手を付けなかった問題を見つけたことに価値があります。上のランクに進むために必要なのは、もう一度大掃除をすることではありません。この仕組みが、この先も崩れないようにすることです。
点数で見る「上げ方」
28点のこの事例は、改善そのものの中身(成果・独自性・難易度)を変えなくても、維持の2項目(清潔・習慣)を上げるだけでランクが上がります。
| 上げ方 | 清潔 | 習慣 | 合計 | ランク |
|---|---|---|---|---|
| 現在 | D(4点) | D(4点) | 28点 | D |
| 清潔・習慣を1段階ずつ上げる | C(8点) | C(8点) | 36点 | C |
| 清潔・習慣をともにAまで上げる | A(16点) | A(16点) | 52点 | B |
成果や独自性を上げるには新しい発想や時間が要りますが、清潔と習慣は仕組みで上げられる項目です。「あと3点」でCランク、清潔と習慣をAまで整えればBランクに届きます。
清潔レベルのカギは「未然防止」
整理・整頓・清掃は、放っておくとモグラ叩きになりがちです。油が落ちたら拭く。カバーが汚れたら交換する。これは、起きてから直す「後追い」です。気づく人がいなければ、今回のように長期間放置されて、また同じ状態になります。
この評価基準では、清潔レベルの最高位は「問題を未然に防止できる仕組み」です。「気をつける」「声をかける」に頼らず、油で汚れにくいカバーにする、清掃の手順と日を決めるなど、放置されない仕組みにすることです。私たち評価者が支援現場で強く感じるのは、多くの中小製造業の現場で、この「不具合が起きない仕組み」まで考える視点が不足していることです。
この事例に当てはめると、次のようになります。
| 起こりうる不具合 | 後追いの対応(Dの発想) | 未然防止の仕組み(例) |
|---|---|---|
| 汚れ防止の段ボールが、油でボロボロになる | 汚れたら段ボールを交換する | 専門家が提案する、カバーを樹脂製あるいは金属製に変更することを検討する。変更は、設備・安全の担当者と確認する |
| 油が落ちても、清掃されない | 気づいた人が拭く | 専門家が提案する、作業終了後の設備周りチェックを標準化する。チェックする場所と、拭く道具の置き場を決めておく(例) |
| 定期的な清掃の決まりがない | 汚れがひどくなってから、まとめて掃除する | 専門家が提案する、定期的に清掃するルールを設定し、現場に明記する。清掃した日を記録する(例) |
| どこから油が落ちるのか、分からない | 落ちた油を拭き続ける | 油が落ちる箇所と原因を調べ、受け皿など発生源で受ける方法を検討する(例)。設備の変更は、設備・安全の担当者と確認する |
上の表は例です。専門家が挙げた3つの理由のうち、どれが自分の職場に近いかを話し合えば、打つ手が決まります。設備の周りを変えるときは、動く部分や熱に近づけないなど、設備・安全の担当者と一緒に確認してください。
習慣(しつけ)レベル:単発の改善から「皆が守る標準化」へ
習慣(しつけ)は、清潔で見つけた良いやり方を標準化する活動です。習慣レベルを上げるには、一人の工夫を、全員が同じように行うルールにします。
- 作業終了後の設備周りチェックの項目を、その場に掲示する
- 定期清掃の日と担当を決め、清掃した記録を残す
- 新しく入った人にも分かるよう、チェックの意味を周知する
次の改善報告で期待すること
専門家は、次の取り組みを求めています。
- なぜ長期間、汚れた状態が放置されていたのか、原因を考える
- カバーの素材の見直し、作業終了後のチェックの標準化、定期清掃のルール設定を検討する
- 次の適切な改善の方向性を考える
放置されない仕組みまで踏み込んだ、次の素晴らしい改善報告を楽しみにお待ちしています。
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