この事例は、プレス機で使う金型の置き場を変え、機械の横に置いた整頓事例で、専門家評価はBランク(46点)。一度の金型交換で、移動歩数が往復約8歩短くなった。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改善の種類 | 整頓 |
| 改善場所 | 工場 |
| 改善対象 | 治具/刃具(プレス機の金型) |
| 専門家評価 | Bランク(46点。Bは46〜65点) |
| 効果 | 金型を横に置くことで、一度の金型交換で移動歩数が往復約8歩短縮 |
改善前の状態(Before)
対象は、プレス機の品種切り替え(段取り替え)で使う金型です。品種を切り替えるたびに金型を交換するため、そのつど金型の置き場まで歩いて取りに行き、使い終わった金型を戻しに行く必要がありました。
専門家コメントにあるように、よく使う金型も、今より遠い場所に置かれていました。交換のたびに、同じ歩行が積み重なっていく状態でした。
改善内容(After)
金型の置き場のレイアウトを変更し、品種切り替えでよく使う金型を、プレス機の横に置くようにしました。使う場所のすぐ近くに金型があるため、取りに行く・戻しに行く距離が短くなります。
その結果、一度の金型交換で、移動歩数が往復で約8歩短くなりました。整頓の3定(定位・定品・定量)でいえば、「どこに置くか」という定位を、使う頻度と使う場所に合わせて見直した改善です。


専門家コメント
改善活動お疲れ様です。プレス機に使う金型の置き場を変更した改善事例ですね。
プレス機の品種切り替えの時によく使う金型をレイアウト変更をすることで、より近くにおき、歩行の距離を短縮化できました。
更なる改善について
一日の労働時間は、「労働時間 = 加工時間 + 付帯作業時間 + ムダな時間」で表すことができます。
プレス機の段取り替えは、付帯作業時間にあたり、プレス機の生産性を高めるには、品種切り替えの段取り時間を短縮し、加工時間を伸ばすのが有効です。
段取り替えのほかには、その他の付帯作業時間としては、「手待ち」「記録」「打合せ」「清掃・点検」などがあります。これらの付帯作業にも着目し、改善の余地がないかを探してみましょう。
5S改善評価:合計46点(Bランク)
| 評価項目 | 評価 | 点数 |
|---|---|---|
| (1)成果の大きさ | B | 12点 |
| (2)改善の独自性 | C | 8点 |
| (3)改善の難易度 | B | 11点 |
| (4)清潔レベル | B | 10点 |
| (5)習慣(しつけ)レベル | D | 5点 |
| 合計 | B | 46点 |
(1)成果の大きさ:B(12点)
理由:一度の金型交換で、移動歩数を往復約8歩短縮した。金型交換は品種を切り替えるたびに発生するため、その都度効果が出る改善です。一方で、交換の頻度や、時間・金額への換算は改善報告に記載がありません。「満足のいく成果」と評価する。
(2)改善の独自性:C(8点)
理由:よく使う物を、使う場所の近くに置くのは、整頓の基本に沿った考え方です。現場で取り組みやすい反面、同じ考え方の改善は多く見られます。「よく似たタイプが多い改善」と評価する。
(3)改善の難易度:B(11点)
理由:金型の置き場のレイアウト変更を伴う改善で、物を少し動かすだけの数分の作業ではありません。ただし、作業の規模や所要時間は改善報告に記載がないため、帯の下側に置きます。「標準的な時間でできた改善」と評価する。
(4)清潔レベル:B(10点)
理由:置き場そのものをプレス機の横に移したため、同じ品種構成であれば、遠くまで取りに行く状態には戻りにくくなりました。一方で、金型を戻す場所の表示や、使う頻度が変わったときの見直しの仕組みは記載がなく、帯の下側とします。「同じ状況なら再発が起きにくい改善」と評価する。
(5)習慣(しつけ)レベル:D(5点)
理由:置き場の変更という1回の改善で、置き方のルールや、他のプレス機・他の金型への展開といった標準化の記述はありません。「習慣化を促さない単発的な改善」と評価する。
評価できる点と、Aランクに近づく次の一歩
評価できる点
合計46点のこの事例は、Bランクの入り口にいます。点数だけを見ると控えめですが、改善の着眼点には、しっかり評価したいところがあります。
- 「繰り返す作業」に目を向けた。金型交換は品種を切り替えるたびに発生します。1回あたり往復約8歩でも、交換のたびに効く改善を選んだ点は、良い目の付けどころです
- 定位を「使う頻度」で決めた。すべての金型を近くに置くのではなく、よく使う金型を機械の横に置いています。整頓の3定のうち、定位を使う頻度と使う場所に合わせて決めた、整頓の考え方に沿った改善です
- 効果を歩数で示した。「近くなった」で終わらせず、「往復約8歩」と数えて報告しています。効果を数字で示すと、次の改善を考える土台になります
あと20点でAランク。習慣・清潔・成果を段階的に上げる
合計46点のこの事例は、Aランク(66点以上)まであと20点です。1つの項目を1段階上げるだけでは届かないため、いちばん伸びしろのある習慣(しつけ)から順に、3つの項目を上げていく形になります。
| 上げ方 | 上がる点 | 合計 | ランク |
|---|---|---|---|
| 現在 | - | 46点 | B |
| 習慣をD(5点)からB(12点)に | +7点 | 53点 | B |
| さらに清潔をB(10点)からA(16点)に | +6点 | 59点 | B |
| さらに成果をB(12点)からA(16点)に | +4点 | 63点 | B |
| さらに習慣をB(12点)からA(16点)に | +4点 | 67点 | A |
習慣(しつけ)は、清潔で見つけた良いやり方を標準化する活動です。「よく使う金型は機械の横に置く」を置き方のルールとして決め、他のプレス機や金型にも広げると、習慣のレベルが上がります。成果は、専門家が挙げた段取り以外の付帯作業にも視点を広げることで、大きくしていけます。
「置き場が元に戻る」を、起きる前に防ぐ
置き場を変えたあとに起こりやすいのは、交換した金型が決めた場所以外に置かれたり、品種構成が変わって、よく使う金型が再び遠い場所になったりすることです。乱れてから気づいて直すのは「後追い」です。清潔レベルの最高位は「問題を未然に防止できる仕組み」です。「気をつけて戻す」に頼らず、表示・配置・手順で、乱れが起きない形を考えます。
| 起こりうる不具合 | 未然防止の仕組み(例) |
|---|---|
| 交換した金型が、決めた置き場以外に置かれる | (例)置き場に金型の名前や番号を表示し、どこに戻すかが一目で分かるようにする(定位・定品) |
| 品種構成が変わり、よく使う金型が遠い場所になる | (例)金型の使用頻度を定期的に見直し、置き場の並びを更新するルールを決める |
| 金型の出し入れで、無理な姿勢や運び方になる | (例)置き場の高さや運搬の方法を見直す。設備・安全に関わるため、設備・安全の担当者と確認して進める |
| 段取り以外の付帯作業にムダが残る | 「手待ち」「記録」「打合せ」「清掃・点検」の時間を書き出し、改善の余地を探す(専門家の提案) |
表の(例)は、改善報告にはない考え方の一例です。設備・安全に関わる変更は、設備・安全の担当者と確認しながら進めてください。今回の改善を出発点に付帯作業全体を見直していくと、Aランクも狙えます。
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