この事例は、壁際に積まれていたコイルの紙管や木枠の不要物を処分し、木枠の置き場を作った整理事例で、専門家評価はDランク(28点)。空いた場所を保つ仕組みが次の課題。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改善の種類 | 整理(整頓を含む) |
| 改善場所 | 建屋外 |
| 改善対象 | 廃棄物(コイルの紙管、木枠) |
| 専門家評価 | Dランク(28点。Dは30点以下) |
| 効果 | 木枠を取り出す時間を、1日平均で10秒短縮×20日。1カ月あたり200秒(200円)の削減(改善報告の試算)。新しいスペースの確保と、火災報知機が見えるようになったことによる安全性の確保 |
改善前の状態(Before)
壁際に、コイルの紙管や木枠が無造作に積まれていました。木枠を取り出すのにも手間がかかり、不要な物品が場所をふさいでいる状態でした。

改善内容(After)
不要な物品を処分して、新たなスペースを確保しました。木枠の置き場を作り、すぐに取り出せるようにしています。壁際が整理されたことで、火災報知機が見えるようになり、安全性の確保にも役立っています。

専門家コメント
壁際にコイルの紙管や木枠が無造作に積まれていた状態から、不要な物品を処分することで、新たなスペースを確保した改善ですね。
5Sの基本である「不要なものを捨てる整理」を実施いただくことで、スペースを確保し、さらに、火災報知機まで出現させて安全性の確保にも役立つ、素晴らしい改善事例ですね。ありがとうございました!
さて、今後の改善に向けてですが、このままだとまた元の状態に戻ってしまうことが懸念されます。そこで、次のことを実施してみてはいかがでしょうか。1つめは、時間が経つと、また不要なものが置かれてしまう可能性があるので、この場所の管理ルールを定めること。2つめは、定期的に状態を点検し、不要なものが溜まらないよう、点検ルールを定めること。折角時間をかけて整理した場所ですので、再び乱れることのないようにがんばってくださいね。
5S改善評価:合計28点(Dランク)
今回の改善を、5つの項目で辛口に評価しました。
| 評価項目 | 評価 | 点数 |
|---|---|---|
| (1)成果の大きさ | C | 8点 |
| (2)改善の独自性 | D | 4点 |
| (3)改善の難易度 | D | 4点 |
| (4)清潔レベル | C | 8点 |
| (5)習慣(しつけ)レベル | D | 4点 |
| 合計 | D | 28点 |
(1)成果の大きさ:C(8点)
理由:新しいスペースが確保でき、火災報知機が見えるようになって安全性の確保にも役立った点は評価できる。ただ、時間の削減は1日10秒×20日で1カ月200秒と小さい。「成果がややもの足りない改善」と評価する。
(2)改善の独自性:D(4点)
理由:不要な物を処分して場所を空けることは、5Sの「整理」の基本。特に目新しい工夫は見られず、「誰でも思いつく改善」と評価する。
(3)改善の難易度:D(4点)
理由:不要な物品を処分し、木枠の置き場を作る作業が中心で、特別な技術を要するものではない。「数分でできた改善」と評価する(処分や置き場づくりの実際の作業時間は改善報告に記載がない)。
(4)清潔レベル:C(8点)
理由:今は空いているが、この場所の管理ルールがなく、時間が経てばまた不要な物が置かれるおそれがある。「何かのきっかけで再発する改善」と評価する。
(5)習慣(しつけ)レベル:D(4点)
理由:管理ルールや点検ルールが、まだ定められていない。皆が守るべき標準化には進んでおらず、「習慣化を促さない単発的な改善」と評価する。
Dランクから上位ランクに上げる工夫と考え方
この改善は「不要な物を捨てて、場所を取り戻した」ところまでです。上のランクに進むために必要なのは、大きな改善を足すことではありません。取り戻した場所に、また不要な物が置かれない仕組みをつくることです。
点数で見る「上げ方」
28点のこの事例は、成果・独自性・難易度を変えなくても、維持の2項目(清潔・習慣)を上げるだけでランクが上がります。
| 上げ方 | 清潔 | 習慣 | 合計 | ランク |
|---|---|---|---|---|
| 現在 | C(8点) | D(4点) | 28点 | D |
| 習慣を1段階上げる | C(8点) | C(8点) | 32点 | C |
| 清潔・習慣をともにAまで上げる | A(16点) | A(16点) | 48点 | B |
「あと3点」でCランク、清潔と習慣を整えればBランクに届きます。この2項目は、仕組みで上げられる項目です。
清潔レベルのカギは「未然防止」
整理・整頓・清掃は、放っておくとモグラ叩きになりがちです。壁際の乱れも、起きてから直す「後追い」になりがちです。積まれてから処分する。散らかってから片付ける。これでは、直してもまた同じことが起きます。
この評価基準では、清潔レベルの最高位は「問題を未然に防止できる仕組み」です。人の注意力や「気をつける」に頼らず、不要な物が置かれようがない構造・配置・表示にすること。私たち評価者が支援現場で強く感じるのは、多くの中小製造業の現場で、この「不具合が起きない仕組み」まで考える視点が不足していることです。
この事例に当てはめると、次のようになります。
| 起こりうる不具合 | 後追いの対応(Dの発想) | 未然防止の仕組み(例) |
|---|---|---|
| 壁際に、また不要な物が置かれる | 積まれてから処分する | 置いてよい物と置き場所を枠と表示で決め、それ以外は置かない場所にする。専門家も、この場所の管理ルールを挙げている |
| 紙管や木枠が、置き場からあふれる | あふれてからまとめて処分する | 置き場に置ける数の上限を表示し、上限を超える前に処分する仕組みにする |
| 火災報知機の前が、また物でふさがれる | 気づいた人が片付ける | 火災報知機の前に物を置かない範囲を、床のマーキングなどで表示する。設置場所や必要な空間は、設備・安全の担当者と確認する |
| 木枠の置き場が分からなくなり、取り出しに手間取る | 探して取り出す | 木枠専用の置き場所を表示し、取り出しやすい位置に決める |
上の表は例です。専門家は、この場所の管理ルールと、定期的な点検ルールを次の一歩に挙げています。右の列の発想で「この整理が崩れる原因」を先に洗い出し、起きる前に手を打つことが清潔レベルを上げます。
習慣(しつけ)レベル:単発の改善から「皆が守る標準化」へ
習慣(しつけ)は、清潔で見つけた良いやり方を標準化する活動です。習慣レベルを上げるには、一人の工夫を、全員が同じように行うルールにします。
- この場所に置いてよい物・置いてはいけない物を、写真付きで掲示する
- 不要な物が出たときの処分の手順を決め、周知する
- 点検する日を決め、不要な物がたまっていないかを確認する
次の改善報告で期待すること
専門家は、時間をかけて整理した場所が再び乱れないよう、次の2点を挙げています。
- この場所の管理ルールを定めているか
- 定期的に状態を点検し、不要な物がたまらないようにする点検ルールがあるか
次なる改善を、楽しみにお待ちしています。
関連する5S活動の事例
不要な物の整理や、置き場に関する事例です。



