この事例は、バルブの水漏れの止水に使うハンダを細いものから太いものに変えた清潔事例で、専門家評価はDランク(24点)。根本原因の対策が課題。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改善の種類 | 清潔 |
| 改善場所 | 工場 |
| 改善対象 | 設備(バルブの水漏れ対応) |
| 専門家評価 | Dランク(24点。Dは30点以下) |
| 効果 | 止水作業の時間を短縮。1日平均120秒短縮×月20日の発生で、1カ月あたり2,400秒の削減(改善報告の試算) |
改善前の状態(Before)
バルブから水漏れが起きたとき、細いハンダを使って止水していました。この止水作業に、時間がかかっていました。

改善内容(After)
止水に使うハンダを、細いものから太いものに変更しました。水漏れを止めるために掛けていた時間が短くなりました。改善報告の試算では、1日平均で120秒の短縮、月に20日発生するので、1カ月あたり2,400秒の削減です。

専門家コメント
改善活動、お疲れさまです。今回は、バルブからの水漏れに対して、使用するハンダを細いものから太いものに変更し、止水作業の時間を短縮された事例ですね。現場の工夫と作業効率の向上という観点では、前向きな取り組みです。
ただし、ご指摘のとおり、ハンダは本来、止水を目的とした材料ではありません。水に常時触れる環境では劣化しやすく、長期的には再発や補修の手間が増える恐れがあります。
再発防止の観点からも、水漏れがなぜ起きるのかを掘り下げて調査し、バルブの構造・劣化・取り付け不良など、根本原因の解消が求められます。
5S改善評価:合計24点(Dランク)
今回の改善を、5つの項目で辛口に評価しました。
| 評価項目 | 評価 | 点数 |
|---|---|---|
| (1)成果の大きさ | C | 8点 |
| (2)改善の独自性 | D | 4点 |
| (3)改善の難易度 | D | 4点 |
| (4)清潔レベル | D | 4点 |
| (5)習慣(しつけ)レベル | D | 4点 |
| 合計 | D | 24点 |
(1)成果の大きさ:C(8点)
理由:止水作業の時間を、1日平均120秒、月2,400秒削減できた点は評価できる。しかし、水漏れが起きる原因そのものは取り除かれておらず、成果は作業時間の短縮にとどまる。「成果がややもの足りない改善」と評価する。
(2)改善の独自性:D(4点)
理由:使う材料の太さを変えて対応する方法は、現場の工夫としては分かりやすいが、発想としては新しさが少ない。「誰でも思いつく改善」と評価する。
(3)改善の難易度:D(4点)
理由:細いハンダを太いハンダに替える変更で、特別な技術や設備を要しない。「数分でできた改善」と評価する。
(4)清潔レベル:D(4点)
理由:専門家が指摘するとおり、ハンダは水に常時触れる環境では劣化しやすい。水漏れの原因が残っているため、再発や補修の手間が増える恐れが大きい。「すぐ乱れる改善」と評価する。
(5)習慣(しつけ)レベル:D(4点)
理由:原因調査の結果や、対応の手順を標準化した記述がない。「習慣化を促さない単発的な改善」と評価する。
Dランクから上位ランクに上げる工夫と考え方
この改善は「早く止められるようになった」改善です。上のランクに進むために必要なのは、止水をさらに速くすることではありません。水漏れが起きる原因を取り除くことです。
点数で見る「上げ方」
24点のこの事例は、改善そのものの中身(成果・独自性・難易度)を変えなくても、維持の2項目(清潔・習慣)を上げるだけでランクが上がります。
| 上げ方 | 清潔 | 習慣 | 合計 | ランク |
|---|---|---|---|---|
| 現在 | D(4点) | D(4点) | 24点 | D |
| 清潔・習慣をともに1段階上げる | C(8点) | C(8点) | 32点 | C |
| 清潔・習慣をともにAまで上げる | A(16点) | A(16点) | 48点 | B |
成果や独自性を上げるには新しい発想や時間が要りますが、清潔と習慣は仕組みで上げられる項目です。「あと7点」でCランク、清潔と習慣を整えればBランクに届きます。
清潔レベルのカギは「未然防止」
整理・整頓・清掃は、放っておくとモグラ叩きになりがちです。水漏れの対応も、起きてから止める「後追い」になりがちです。漏れたら塞ぐ。塞いだところが劣化したら、また塞ぐ。これでは、対応の時間が短くなっても、水漏れそのものは繰り返されます。
この評価基準では、清潔レベルの最高位は「問題を未然に防止できる仕組み」です。人の腕や「気をつける」に頼らず、水漏れが起きようのない部品・点検・手順にすること。私たち評価者が支援現場で強く感じるのは、多くの中小製造業の現場で、この「不具合が起きない仕組み」まで考える視点が不足していることです。
この事例に当てはめると、次のようになります。
| 起こりうる不具合 | 後追いの対応(Dの発想) | 未然防止の仕組み(例) |
|---|---|---|
| 水漏れの原因が残ったまま、再発する | 漏れるたびに止水する | 「なぜなぜ分析」で、バルブの構造・劣化・取り付け不良などの根本原因を特定し、原因そのものを取り除く |
| 塞いだハンダが劣化し、止水できなくなる | 劣化したら補修する | 水に常時触れる箇所には、止水を目的とした部品・材料を選ぶ。選定は設備の担当者と確認する |
| バルブの劣化に気づかず、突然漏れる | 漏れてから対応する | バルブの点検日と交換の目安を決め、漏れる前に部品を交換する |
| 取り付けの不良で漏れる | 漏れたときに締め直す | 取り付け手順と確認項目を決め、組み付け後の確認を手順に入れる |
上の表は例です。大切なのは、右の列の発想で「水漏れが再発する原因」を先に洗い出し、起きる前に手を打つことです。バルブや配管の補修の方法は、設備・安全の担当者と確認して進めてください。
習慣(しつけ)レベル:単発の改善から「皆が守る標準化」へ
習慣(しつけ)は、清潔で見つけた良いやり方を標準化する活動です。習慣レベルを上げるには、一人の工夫を、全員が同じように行うルールにします。
- 原因調査の結果と、決めた恒久対策を、写真付きの手順として残して共有する
- 水漏れが起きたときの対応(誰が、何を使って、どこまで行うか)を決めて周知する
- バルブの点検・交換の日を決め、実施したことを記録する
次の改善報告で期待すること
専門家は、次の3点に取り組むことを求めています。
- 水漏れがなぜ起きるのかを掘り下げて調査する(「なぜなぜ分析」の活用)
- バルブの構造・劣化・取り付け不良など、原因を特定した上で、恒久対策を実施する
- 現場での気づきをきっかけに、より本質的な改善につなげる
原因を特定した上での恒久対策が、真の意味での改善だと、専門家は述べています。今後の継続的な改善活動を期待しています。
関連する5S活動の事例
同じ工場の設備まわりの、上位ランクの事例です。



