この事例は、工場の設備に垂れていた油を拭き取った清掃事例で、専門家評価はDランク(24点)。きれいになったが、油が垂れた原因の分析が次の課題。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改善の種類 | 清掃 |
| 改善場所 | 工場 |
| 改善対象 | 設備(油で汚れた機械) |
| 専門家評価 | Dランク(24点。Dは30点以下) |
| 効果 | 機械の油を拭いてきれいにした。衛生度が少し上がった(専門家評価による) |
改善前の状態(Before)
機械が、油で汚れていました。設備の上から、油がタラーと垂れていた状態です。

改善内容(After)
油を拭き取って、きれいにしました。

専門家コメント
設備の上からタラーッと垂れている油を、きれいに拭き取ってくれた改善です。これで、少し衛生度が上がったでしょうか。ついつい見逃しがちな設備の汚れについて、改善をいただき、ありがとうございました。
ただ、この改善報告をきっかけに、チームとして考えてほしいことがあります。なぜこの設備の上から、油が垂れてきたのか。その要因についてです。異常なのか、そうでないのか。異常でないなら、どの程度までが普通なのか。異常なら、何が原因なのか。
こういった何気ない改善から、大きなトラブルを回避できる改善に結びつくことがほとんどです。ですので、これらの現象についてしっかり分析して、トラブルを防げるルールを検討してください。
5S改善評価:合計24点(Dランク)
今回の改善を、5つの項目で辛口に評価しました。
| 評価項目 | 評価 | 点数 |
|---|---|---|
| (1)成果の大きさ | C | 8点 |
| (2)改善の独自性 | D | 4点 |
| (3)改善の難易度 | D | 4点 |
| (4)清潔レベル | D | 4点 |
| (5)習慣(しつけ)レベル | D | 4点 |
| 合計 | D | 24点 |
(1)成果の大きさ:C(8点)
理由:見逃されがちな設備の油汚れに気づいて拭き取り、衛生度が少し上がった点は評価できる。ただし、汚れが設備や品質に与える影響は報告に書かれていない。「成果がややもの足りない改善」と評価する。
(2)改善の独自性:D(4点)
理由:油汚れを拭き取るのは、清掃の基本的な作業。「誰でも思いつく改善」と評価する。
(3)改善の難易度:D(4点)
理由:拭き取りで済む作業で、特別な準備や技術は要らない。「数分でできた改善」と評価する。
(4)清潔レベル:D(4点)
理由:油が垂れる原因が分かっていない。原因が残っていれば、また油が垂れて汚れる。「すぐ乱れる改善」と評価する。
(5)習慣(しつけ)レベル:D(4点)
理由:どの程度の油の垂れなら正常か、どうなったら異常かのルールがない。「習慣化を促さない単発的な改善」と評価する。
Dランクから上位ランクに上げる工夫と考え方
設備の油汚れに目を向けたことは、大事な一歩です。上のランクに進むために必要なのは、もっと丁寧に拭くことではありません。なぜ油が垂れるのかを突き止め、汚れる前にトラブルを防ぐ仕組みをつくることです。
点数で見る「上げ方」
24点のこの事例は、維持の2項目(清潔・習慣)を上げるだけでランクが上がります。習慣だけを1段階上げても28点で、Dのままです。
| 上げ方 | 清潔 | 習慣 | 合計 | ランク |
|---|---|---|---|---|
| 現在 | D(4点) | D(4点) | 24点 | D |
| 清潔・習慣を1段階ずつ上げる | C(8点) | C(8点) | 32点 | C |
| 清潔・習慣をともにAまで上げる | A(16点) | A(16点) | 48点 | B |
清潔と習慣は仕組みで上げられる項目です。清潔と習慣の両方を整えて、はじめてCランクに届きます。
清潔レベルのカギは「未然防止」
整理・整頓・清掃は、放っておくとモグラ叩きになりがちです。油の汚れも、垂れてから拭く「後追い」になりがちです。汚れたら拭く。またしばらくすると垂れる。これでは、拭いた後でまた同じ状態になります。
この評価基準では、清潔レベルの最高位は「問題を未然に防止できる仕組み」です。「気づいたら拭く」「気をつける」に頼らず、油が垂れる原因をなくすか、垂れても大きなトラブルにならない仕組みにすること。私たち評価者が支援現場で強く感じるのは、多くの中小製造業の現場で、この「不具合が起きない仕組み」まで考える視点が不足していることです。
この事例に当てはめると、次のようになります。
| 起こりうる不具合 | 後追いの対応(Dの発想) | 未然防止の仕組み(例) |
|---|---|---|
| 設備の上から、また油が垂れる | 汚れが見えてから拭く | 油が垂れる原因(異常か、通常の範囲か)を調べ、原因に対する手を打つ(例。設備に関わるため、設備・安全の担当者と一緒に確認する) |
| どこまでが普通か、人によって判断が違う | 気づいた人が、自分の感覚で判断する | 「この程度までは正常」「これを超えたら異常」という基準を、写真などで示す(例) |
| 異常のサインを見逃す | 大きなトラブルになってから対応する | 異常を見つけたときの連絡先と手順を決めて、設備の近くに掲示する(例) |
| 汚れの点検が、人によってまちまち | 気づいた人だけが拭く | 点検する場所と周期を決め、点検の記録を残す(例) |
上の表は例です。専門家は、この現象を分析して、トラブルを防げるルールを検討するよう求めています。設備に手を加える案は、必ず設備・安全の担当者と確認してください。右の列の発想で、「この清掃が繰り返しになる原因」を先に洗い出し、起きる前に手を打つことが清潔レベルを上げます。
習慣(しつけ)レベル:単発の改善から「皆が守る標準化」へ
習慣(しつけ)は、清潔で見つけた良いやり方を標準化する活動です。習慣レベルを上げるには、一人の気づきを、全員が同じように行うルールにします。
- 油汚れの点検場所と、正常・異常の基準を決めて掲示する
- 新しく入った人にも分かるよう、基準を周知する
- 点検日を決めて、点検の結果を記録する
次の改善報告で期待すること
専門家は、次の点を考えるよう求めています。
- なぜこの設備の上から、油が垂れてきたのか
- 異常なのか、そうでないのか。異常でないなら、どの程度までが普通か
- 異常なら、何が原因か
次の報告では、こうした現象を分析し、抜本的に解決できた取り組みを期待しています。
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