この事例は、工場のほうき置き場を片づけてきれいにした整理事例で、専門家評価はDランク(24点)。表示で乱れを防ぐことが次の課題。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改善の種類 | 整理 |
| 改善場所 | 工場 |
| 改善対象 | 工具/備品(ほうき置き場) |
| 専門家評価 | Dランク(24点。Dは30点以下) |
| 効果 | ほうき置き場がきれいになった(改善報告に数値の記載なし) |
改善前の状態(Before)
ほうき置き場が、乱れた状態でした。専門家は、改善前の写真から、次の3点を読み取っています。

改善内容(After)
ほうき置き場を、きれいにしました。専門家は、問題の箇所を自分で見つけて対処したことに、まず感謝したい、と述べています。

専門家コメント
ほうき置き場をきれいにした改善報告です。問題の箇所を自分で見つけて対処したことに、まず感謝します。ありがとうございます。
でも、なぜこのような状態になったのでしょうか。改善前の写真を見ると、①白いホウキが何本か立てかけてある、②チリトリも手前に放置されている、③ゴミ箱の右側に不要物がいくつかある、という状態でした。①と②は、本来置くべきところに置かれず、③は、置くべきでない物を、とりあえず置いておいた、というところでしょうか。
きれいに片づきましたが、このままでは、また同じ状態がいつか再現してしまうでしょう。たとえば①と②は、本来の置き場所に置くべきだけど、手前に立てかけておけばいいか、というちょっとした手抜き心が蓄積した状態かと想像します。
だとすれば、「ホウキをここに立てかけないようにしてください」「ホウキは本来のホウキ置き場に戻しましょう」といった表示をすれば、多くの人は戻すと思います。加えて、朝礼などで徹底をお願いすることも効果的です。③も同じで、「ここにゴミを置かないようにしてください」「ゴミ置き厳禁!」などの表示で、解決が期待できます。
こうやって問題が起きない職場をつくることが、5S活動の本質的な意味です。参考にして、新しい改善ネタとして使ってください。
5S改善評価:合計24点(Dランク)
今回の改善を、5つの項目で辛口に評価しました。
| 評価項目 | 評価 | 点数 |
|---|---|---|
| (1)成果の大きさ | C | 8点 |
| (2)改善の独自性 | D | 4点 |
| (3)改善の難易度 | D | 4点 |
| (4)清潔レベル | D | 4点 |
| (5)習慣(しつけ)レベル | D | 4点 |
| 合計 | D | 24点 |
(1)成果の大きさ:C(8点)
理由:問題の箇所を自分で見つけ、ほうき置き場をきれいにした点は評価できる。ただ、片づけた量や時間などの数値は改善報告になく、成果は限定的。「成果がややもの足りない改善」と評価する。
(2)改善の独自性:D(4点)
理由:ほうき置き場を片づけてきれいにするのは、整理・整頓の基本的な取り組みで、特に目新しさはない。「誰でも思いつく改善」と評価する。
(3)改善の難易度:D(4点)
理由:片づけとほうき置き場の清掃で完了できる。特別な技術や設備は要らない。「数分でできた改善」と評価する。
(4)清潔レベル:D(4点)
理由:専門家が指摘するとおり、ほうきを立てかけたり、不要物をとりあえず置いたりする状態を防ぐ仕組みが、改善報告にない。「手抜き心」が積み重なれば、すぐ元に戻る。「すぐ乱れる改善」と評価する。
(5)習慣(しつけ)レベル:D(4点)
理由:置き場に戻す、置かないなどの表示や、朝礼での周知は、専門家が今後の課題として挙げている段階。現時点では、単発の改善といえる。「習慣化を促さない単発的な改善」と評価する。
Dランクから上位ランクに上げる工夫と考え方
この改善は「きれいにした」段階です。上のランクに進むために必要なのは、もう一度きれいにすることではありません。この仕組みが、この先も崩れないようにすることです。
点数で見る「上げ方」
24点のこの事例は、改善そのものの中身(成果・独自性・難易度)を変えなくても、維持の2項目(清潔・習慣)を上げるだけでランクが上がります。
| 上げ方 | 清潔 | 習慣 | 合計 | ランク |
|---|---|---|---|---|
| 現在 | D(4点) | D(4点) | 24点 | D |
| 清潔・習慣を1段階ずつ上げる | C(8点) | C(8点) | 32点 | C |
| 清潔・習慣をともにAまで上げる | A(16点) | A(16点) | 48点 | B |
成果や独自性を上げるには新しい発想や時間が要りますが、清潔と習慣は仕組みで上げられる項目です。「あと7点」でCランク、清潔と習慣をAまで整えればBランクに届きます。
清潔レベルのカギは「未然防止」
整理・整頓・清掃は、放っておくとモグラ叩きになりがちです。ほうきが立てかけられたら戻す。ゴミが置かれたら片づける。これは、起きてから直す「後追い」です。片づけた人の手間だけが増えて、乱れる原因は残ったままです。
この評価基準では、清潔レベルの最高位は「問題を未然に防止できる仕組み」です。「気をつける」「声をかける」に頼らず、置きたくなる場所に置けない、置き場が一目で分かる表示にすることです。私たち評価者が支援現場で強く感じるのは、多くの中小製造業の現場で、この「不具合が起きない仕組み」まで考える視点が不足していることです。
この事例に当てはめると、次のようになります。
| 起こりうる不具合 | 後追いの対応(Dの発想) | 未然防止の仕組み(例) |
|---|---|---|
| ほうきが手前に立てかけられる | 気づいた人が元に戻す | 専門家が挙げる「ホウキは本来のホウキ置き場に戻しましょう」の表示を、立てかけやすい場所に出す。ほうきの置き場(定位置)にも表示する |
| チリトリが手前に放置される | 気づいた人が片づける | ほうきとチリトリを1組にして、同じ置き場に置く形にして表示する(例)。戻す場所が一目で分かるようにする |
| 不要物が「とりあえず」置かれる | 気づいたときに片づける | 専門家が例に挙げる「ここにゴミを置かないようにしてください」「ゴミ置き厳禁!」の表示を出す。不要物の出し場所を別に決めて表示する(例) |
| 表示があっても、守られなくなる | 声をかける | 専門家が挙げる朝礼での徹底に加え、定期的に置き場を見る日を決める(例) |
上の表は例です。表示の言葉は、専門家が挙げた例文を、そのまま使えます。大切なのは、右の列の発想で「乱れる原因」を先に洗い出して、起きる前に手を打つことです。
習慣(しつけ)レベル:単発の改善から「皆が守る標準化」へ
習慣(しつけ)は、清潔で見つけた良いやり方を標準化する活動です。習慣レベルを上げるには、一人の工夫を、全員が同じように行うルールにします。
- 置き場の表示の意味を、朝礼などで周知する
- 新しい人が入っても分かるよう、ほうき・チリトリの置き場を写真付きで掲示する
- 置き場が守られているか見る点検の日を決めておく
次の改善報告で期待すること
専門家は、次の取り組みを勧めています。
- ほうきを立てかけないよう、また本来の置き場に戻すよう、表示をする
- ゴミを置かないよう、表示をする
- 朝礼などで、表示の意味や置き方の徹底をお願いする
問題が起きない職場をつくる、より良い改善報告を、楽しみにお待ちしています。
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