この事例は、荷造りロープと現品票の置き場を使用場所の近くに移した整頓事例で、専門家評価はDランク(28点)。移動は短くなったが、維持の仕組みは次の課題。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改善の種類 | 整頓(改善報告のカテゴリは整理) |
| 改善場所 | 工場 |
| 改善対象 | 工具/備品(荷造りロープ、現品票) |
| 専門家評価 | Dランク(28点。Dは30点以下) |
| 効果 | 移動距離が往復12mから3mになった。1日8回で72mの移動距離を短縮(改善報告の試算) |
改善前の状態(Before)
ロープと現品票の置き場が、使う場所から遠く離れていました。取りに行くだけで、往復12mの移動が必要な状態でした。

改善内容(After)
ロープと現品票の保管場所を、使用場所の近くに移しました。往復の距離は12mから3mに短くなり、1日8回で72mの移動距離を短縮できています(改善報告の試算)。作業者の移動による負担も軽くなりました。

専門家コメント
ロープと現品票の置き場が遠く離れており、往復で12mの移動が必要だった状態だったのを、使用場所の近くに保管場所を移動し、往復距離を3mに短縮することにより、作業効率の向上と、作業者の移動による負担軽減を実現した改善ですね!
無駄な移動が減ることで、作業時間の短縮だけでなく、疲労軽減にもつながる点が素晴らしいです。日々の小さな時間短縮が積み重なれば、大きな生産性向上につながることでしょう! ありがとうございました。
しかし、この改善は「本当に持続できるか?」という点を考える必要があります。保管場所が変更されるリスクはないか(いつの間にか元の場所に戻されたり、別のものが置かれたりしないか)。新しい保管場所の利便性は十分か(他の作業の邪魔になっていないか)。誰でも迷わず使える仕組みになっているか(ラベル表示や定期点検で、乱れを確認するルールはあるか)。ただ「置き場所を変えただけ」では、長期的な効果が保証されないことが多いです。「維持・標準化の仕組みづくり」にも取り組んでみてください。
5S改善評価:合計28点(Dランク)
今回の改善を、5つの項目で辛口に評価しました。
| 評価項目 | 評価 | 点数 |
|---|---|---|
| (1)成果の大きさ | C | 8点 |
| (2)改善の独自性 | D | 4点 |
| (3)改善の難易度 | D | 4点 |
| (4)清潔レベル | C | 8点 |
| (5)習慣(しつけ)レベル | D | 4点 |
| 合計 | D | 28点 |
合計は、8(成果)+4(独自性)+4(難易度)+8(清潔)+4(習慣)=28点です。
(1)成果の大きさ:C(8点)
理由:移動距離を12mから3mに短縮し、作業効率向上と負担軽減を実現した点は評価できる。しかし、大幅な生産性向上やコスト削減とまでは言えず、影響範囲も限定的。「成果がややもの足りない改善」と評価する。
(2)改善の独自性:D(4点)
理由:物品の置き場を使用場所の近くに移動するのは、整理・整頓の基本的な考え方であり、特に目新しい工夫はない。他の改善と類似したものが多く、誰でも思いつく改善の範囲内。「誰でも思いつく改善」と評価する。
(3)改善の難易度:D(4点)
理由:保管場所の移動は特別な技術を必要とせず、短時間で完了できるシンプルな作業。したがって、「数分でできた改善」と評価する。
(4)清潔レベル:C(8点)
理由:保管場所を変更しただけでは、時間が経つと元の場所に戻されたり、新たな物が置かれて乱れる可能性がある。「何かのきっかけで再発する改善」と評価する。
(5)習慣(しつけ)レベル:D(4点)
理由:新しい保管場所のルールが徹底されていなければ、誰かの判断で勝手に変更されたり、管理が曖昧になる可能性がある。「習慣化を促さない単発的な改善」と評価する。
Dランクから上位ランクに上げる工夫と考え方
専門家は、この改善を「やるべきことをやっただけの改善」と評しています。置き場を近づけた効果は確かにあります。上のランクに進むために必要なのは、大きな改善を足すことではありません。近づけた置き場が、この先も崩れないようにすることです。
点数で見る「上げ方」
28点のこの事例は、成果・独自性・難易度を変えなくても、維持の2項目(清潔・習慣)を上げるだけでランクが上がります。
| 上げ方 | 清潔 | 習慣 | 合計 | ランク |
|---|---|---|---|---|
| 現在 | C(8点) | D(4点) | 28点 | D |
| 習慣を1段階上げる | C(8点) | C(8点) | 32点 | C |
| 清潔・習慣をともにAまで上げる | A(16点) | A(16点) | 48点 | B |
「あと3点」でCランク、清潔と習慣を整えればBランクに届きます。この2項目は、仕組みで上げられる項目です。
清潔レベルのカギは「未然防止」
整理・整頓・清掃は、放っておくとモグラ叩きになりがちです。置き場の乱れも、起きてから直す「後追い」になりがちです。ロープが別の場所に移されたら探しに行く。別の物が置かれてから片付ける。これでは、直してもまた同じことが起きます。
この評価基準では、清潔レベルの最高位は「問題を未然に防止できる仕組み」です。人の注意力や「気をつける」に頼らず、置き場が勝手に変わらず、別の物も置けない構造・配置・表示にすること。私たち評価者が支援現場で強く感じるのは、多くの中小製造業の現場で、この「不具合が起きない仕組み」まで考える視点が不足していることです。
この事例に当てはめると、次のようになります。
| 起こりうる不具合 | 後追いの対応(Dの発想) | 未然防止の仕組み(例) |
|---|---|---|
| いつの間にか、ロープが元の場所に戻される | 気づいた人が新しい場所に移し直す | 新しい保管場所に、ロープと現品票の定位置をラベルやマーキングで表示する。元の場所には「移設しました」の表示を付ける |
| 新しい場所に別の物が置かれる | 見つけた人が片付ける | 定位置の枠を表示し、専用の置き場として決める。ここにはロープと現品票以外を置かないルールにする |
| 新しい場所が、他の作業の邪魔になる | 邪魔になってから移す | 使いやすさと、通路・他の作業への影響を、定期点検で見直す日を決めておく |
| ロープや現品票が増えて、置き場からあふれる | あふれてから置き場を探す | 置ける量を決めて表示し、増えたときの管理方法をあらかじめ決めておく |
上の表は例です。専門家は、定位置の明確化(ラベル表示やマーキング)、点検ルール、物が増えたときの管理方法を次の一歩に挙げています。右の列の発想で「この改善が崩れる原因」を先に洗い出し、起きる前に手を打つことが清潔レベルを上げます。
習慣(しつけ)レベル:単発の改善から「皆が守る標準化」へ
習慣(しつけ)は、清潔で見つけた良いやり方を標準化する活動です。習慣レベルを上げるには、一人の工夫を、全員が同じように行うルールにします。
- 新しい保管場所と使い方のルールを、その場に掲示する
- 置き場所を勝手に変えないこと、変えるときは決めた手順で行うことを周知する
- 定期的に使い勝手を見直し、最適な配置を保つ点検日を決める
次の改善報告で期待すること
専門家は、「とりあえず改善した」ではなく「持続可能な改善」にすることが重要だとして、次の点を挙げています。
- 新しい保管場所の定位置を明確にし、誰でも迷わないようにしているか(ラベル表示やマーキング)
- 使い勝手を定期的に見直し、最適な配置を維持する点検ルールがあるか
- 物品が増えたときの管理方法を決め、再び乱れないようにしているか
次回の改善報告では、「維持・継続の仕組み」にも踏み込んだ取り組みを期待しています。
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