5S活動とは?意味・目的・進め方7ステップ・続かない理由と直し方を製造現場目線で解説

5S活動とは?意味・目的・進め方7ステップ・続かない理由と直し方を製造現場目線で解説
5S活動とは?意味・目的・進め方7ステップ・続かない理由と直し方を製造現場目線で解説

5S活動とは、整理・整頓・清掃・清潔・習慣(しつけ)の5つを通じて、ムダや異常が起きにくく、起きてもすぐ見える職場をつくり、そのやり方を標準=当たり前の仕事として根づかせる活動です。

始業前の工具置き場。「あれ、いつものスパナがない」と、隣の棚まで見に行く。

ラベルは貼った。線も引いた。それでも、朝のスパナ探しは減っていない。多くの現場で聞く場面です。

ま、改善した現場はもちろん、それだけで一歩進んではいます。それでも元に戻ってしまうのは、誰かがだらしないからではありません。置き場・入口・点検・評価のどれかに、仕組みが足りないだけです。

結論から言います。5S活動は掃除の活動ではなく、探す・運ぶ・待つを減らす仕組みづくりです。この視点に立つと、次に何をすればよいかが見えてきます。

この記事は、二種類の方に向けて書きました。ひとつは、上から「5Sをやれ」と言われ、下からは「また掃除か」と言われる、持ち場をまとめる立場の方。もうひとつは、そろそろ持ち場を任されそうで、何から話せばよいか迷っている方です。休憩時間の五分で読み進められるよう、章ごとに答えを先に書きました。

5Sは、きれいにする活動ではなく、戻らない仕組みを決める活動です。

5S-CONCEPTのサイトには、整理・整頓・清掃・清潔・習慣(しつけ)の5つのカテゴリーで、重複を除いて879件の記事が公開されています(2026年9月27日時点、サイトの公開記事数を集計)。最も多いのは整頓の552件です。この記事では、公的機関の資料による定義と、実際に公開されている改善事例の記述を組み合わせて、意味、目的、進め方、続かない理由、評価の考え方まで一本にまとめました。

事例の効果は、各事例記事に記載された試算です。期間の目安は5S-CONCEPTの一般的な提案で、効果や成果をお約束するものではありません。検索順位やAIによる引用も、保証できるものではありません。

なお、この記事は2026年9月時点の内容です。まず自分の持ち場の、いちばん困っている一か所だけを思い浮かべながら読んでみてください。

評価の考え方を先に確認したい方は、既存記事「5S活動のマンネリ化を打破!現場が動く『5つの評価基準』とチェックシート活用法」から読み始めてください。

目次

5S活動とは?結論は「掃除の活動」ではなく「探す・運ぶ・待つを減らす仕組みづくり」

5S活動とは、整理・整頓・清掃・清潔・習慣(しつけ)の5つを通じて、ムダや異常が起きにくく、起きてもすぐ見える職場をつくり、そのやり方を標準として根づかせる活動です。目的は「きれいにすること」ではなく、「探す・運ぶ・待つ」を減らし、いつもと違うことにすぐ気づけるようにすることです。まず定義を一文で押さえ、掃除との違い、五つのSの現場での意味までを整理します。

5S活動の定義:5つのSを、当社では次のように捉えています

5Sの名前は、整理(Seiri)、整頓(Seiton)、清掃(Seisou)、清潔(Seiketsu)、習慣(しつけ)(Shitsuke)の頭文字がすべてSであることに由来します。

公的機関の資料では、5つ目を「躾」と書き、決めたルールを守り習慣にすることと説明しています。5S-CONCEPTでは、この5つ目を「習慣(しつけ)」と呼びます。「守らせる」ことではなく、清潔の段階で見つけた良いやり方を標準にして、無理なく続く形にすることだと考えているからです。

5S-CONCEPTでは、五つのSを次のように捉えています。

  1. 整理:不要なモノが、探しても存在しない現場を目指す活動
  2. 整頓:3定(定置・定品・定量)で、整理で必要なモノだけになった現場のモノを大切にする活動。最高の効率で働いてもらう置き方を追求する
  3. 清掃:ピカピカな状態を維持するための活動
  4. 清潔:整理・整頓・清掃の3Sがモグラ叩きになりがちなので、発生を未然に防ぐ対策を織り込み、仕組みにしていく活動
  5. 習慣(しつけ):清潔で見つけた良いやり方を、標準化するための活動

なお、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」では、整理・整頓・清掃・清潔の4Sに5つ目を加えたものが5Sとされ、整理は不要なものを排除して必要なものだけを残すこと、整頓は必要なものを定められた場所に定められた方法で置き、容易に取り出せるようにすることと説明されています。この記事の定義は、こうした一般的な説明を土台に、5S-CONCEPTの考え方を加えたものです。

出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「4S(整理、整頓、清掃、清潔)」、中小機構 生産性向上支援「マンガでわかる5S活動」(いずれも2026年9月閲覧)

掃除や大掃除と5S活動は、どこが違うのか

「5Sって、要するに掃除でしょう」と言われることがあります。半分は当たっています。清掃は5Sの一つです。ただ、掃除だけでは、モノが増える理由も、探す理由も、元に戻る理由も変わりません。違いを表にすると次のようになります。

観点掃除・大掃除5S活動
目的汚れを取る探す・運ぶ・待つを減らし、異常に気づく
対象床や設備の表面置き場、通路、道具、決めごとの全体
期間一日で終わる終わりのない継続
確かめ方きれいに見えるか三か月後も戻っていないか

大掃除のあとに戻ってしまうのは、頑張りが足りないからではありません。きれいにしただけで、モノが増える入口や、置き場の決め方、点検の仕組みは、そのままだからです。

整理・整頓・清掃・清潔・習慣(しつけ)を、現場の言葉で言い直す

5つのSは、順番に並べると難しく見えます。現場の言葉に直すと、整理は「不要なモノが存在しない」、整頓は「モノに最高の効率で働いてもらう置き方」、清掃は「ピカピカを保つ」、清潔は「発生を未然に防ぐ仕組み」、習慣(しつけ)は「良いやり方を標準にする」です。専門用語が出たときは、その場で一文の言い直しを添えます。

整理とは、不要なモノを、どれだけ探しても見つけられない現場を目指す活動

整理のゴールは、片付いた棚ではありません。不要なモノが、探しても存在しない現場です。ここで迷うのは自然なことです。「いつか使うかもしれない」と思うと、判断が止まります。

中小機構のQ&Aでは、5Sが進まない理由の一つに、判断基準が明確になっていないことが挙げられています。そこで、使う頻度で分けます。毎日使う、週に一回使う、月に一回以下、使い道が分からない。この四つに分けるだけで、残すモノと、置き場所の近さが決まります。

判断が付かないものは、一時置き場を作って責任者と保管期限を決めます。期限が来ても使われなければ処分を検討します。捨てる作業ではなく、決める作業だと考えると、気持ちが軽くなります。

整頓とは、必要なモノだけになった現場で、モノに最高の効率で働いてもらう置き方を追求する活動

整頓は、整理で必要なモノだけになった現場で行います。モノを大切にするとは、しまい込むことではなく、モノに最高の効率で働いてもらうことです。よく「ラベルを貼ること」と混同されますが、ラベルは手段で、目的は「探さずに取れて、迷わず戻せる」ことです。

そのために使うのが3定です。3定とは、定置(どこに置くか)、定品(何を置くか)、定量(いくつ置くか)の三つを決めることです。たとえば工具なら、置く場所、置く工具の種類、置く数を決めます。決める順番は、置く人ではなく、いちばん使う人の手の動きから考えます。詳しくは置き場の決め方の章で扱います。

清掃とは、ピカピカな状態を維持するための活動

清掃は、汚れたら拭く作業ではなく、ピカピカな状態を維持するための活動です。拭きながら、設備のオイルのにじみ、ボルトのゆるみ、通常と違う音や汚れ方に気づく点検の時間でもあります。

ただし、清掃だけでは、汚れは翌日も同じ場所に出ます。汚れが出る原因を止める仕事は、次の清潔が受け持ちます。また、設備の分解や修理につながる作業は、メーカーの取扱説明書や社内の決まり、担当部署の手順に従ってください。現場だけで危険な作業をしないことが前提です。

清潔とは、モグラ叩きになりがちな3Sに、発生を未然に防ぐ仕組みを織り込む活動

整理・整頓・清掃の3Sは、放っておくと、モグラ叩きになりがちです。モノが増えたら片付ける、汚れたら拭く、乱れたら戻す。頑張るほど、同じ作業を繰り返してしまいます。

清潔は、この繰り返しを止める段階です。モノが増える入口を止める、汚れの発生源に対策する、乱れにくい置き方に変える。こうした発生を未然に防ぐ対策を、仕組みとして織り込みます。仕組みに織り込めば、頑張らなくても状態が保たれます。清掃と清潔を組み合わせた考え方は、既存記事清掃×清潔で汚れを未然防止|発生源を断つプロセス設計と現場改善10の実践策でも紹介しています。

習慣(しつけ)とは、清潔で見つけた良いやり方を、標準化するための活動

習慣(しつけ)は、意識を高める活動ではありません。清潔の段階で見つけた良いやり方を、誰がやっても同じようにできる標準にして、続く形にする活動です。

標準にする方法の例は、置き場の写真を掲示する、手順を一枚にまとめる、点検表にする、といったものです。標準があれば、新しく来た仲間も、同じ状態に戻せます。続かないときは、人の気持ちではなく、標準の作り方を見直します。

5つのSを一枚で見る:一言・合言葉・ありがちな勘違い

Sの名前一言でいうと現場の合言葉ありがちな勘違い
整理不要なモノが存在しない「探しても、ない」捨てるだけの作業
整頓モノに最高の効率で働いてもらう「探さず、迷わず戻す」ラベルを貼れば終わり
清掃ピカピカを維持する「拭きながら点検」床を掃くだけ
清潔発生を未然に防ぐ仕組み「モグラ叩きをやめる」きれいな状態のこと
習慣(しつけ)良いやり方を標準にする「意識しなくても戻せる」意識や根性の話

この表は、朝礼や休憩室での共有にも使えます。まず一つのSだけを選び、明日試す一か所を決めてみてください。

この記事の読み方:持ち場をまとめる人も、これから任される人も

持ち場をまとめる立場の方は、続かない理由の章と、進め方7ステップの章から読むと、明日の朝礼で使える話が見つかります。これから持ち場を任されそうな方は、上の五つのSの言い直しと、改善事例の章から読むと、何から話せばよいかが分かります。

どの章も、先頭に答えを置いています。時間がない日は、各章の最初の数行だけを拾って読んでも大丈夫です。

5S活動の目的と効果|掃除ではなく「異常が見える職場」をつくる

5S活動の目的は、職場のムダを減らし、いつもと違うことにすぐ気づける状態をつくることです。その結果として、品質・コスト・納期の改善や、安全な作業につながると考えられています。ただし、効果の大きさは現場によって違うため、この記事では効果を約束せず、公開事例に記載された数字の読み方と、自分の現場で確かめる方法をあわせて示します。

減らしたいのは「探す・運ぶ・待つ」の三つのムダ

現場で毎日起きているムダは、大きく三つに分けられます。

  1. 探す:工具、部品、書類、台車を探して歩く
  2. 運ぶ:必要以上に遠い置き場まで、何度も往復する
  3. 待つ:モノが見つからず、あるいは足りず、作業が止まる

どれも、一回は数十秒かもしれません。ただ、毎日、複数の人が繰り返すと、大きな時間になります。しかも、頑張っている人ほど気づきにくいのが特徴です。「探すのも仕事のうち」と受け止めてしまうからです。

5Sは、このムダを本人の努力ではなく、置き場と決め方で減らします。だから、5Sの入口では「今日、何を探したか」を思い出すだけで十分です。

異常が見えると、安全と品質を守りやすくなる

床に物が置かれ、通路が狭いと、つまずきや接触の危険が増えます。オイルのにじみは、汚れて見えにくいと、設備の異常のサインを見落とします。工具の数がそろっているかが見えると、置き忘れにも気づけます。

厚生労働省の職場のあんぜんサイトは、4Sを、安全で健康な職場づくりと生産性の向上をめざす活動として説明しています。中小機構の公開資料では、5Sを進める効果として、品質・コスト・納期の改善や顧客満足の向上が挙げられています。つまり、5Sは見た目を整える活動ではなく、仕事の土台を整える活動です。

安全や設備の異常に関わる判断は、社内の決まりや専門部署の手順を優先します。5Sの目的は、危険な作業を現場の判断だけで進めることではなく、異常に早く気づき、適切な担当につなぐことです。

出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「4S」、中小機構「マンガでわかる5S活動」

公開事例の効果は「1日の短縮秒数×月間の発生日数」で書かれている

5S-CONCEPTの改善事例では、効果を「1日平均で何秒短縮×月間何日発生」の形で記載しています。たとえば、コレットを引出しから専用のコレット立てへ移した事例では、「1日平均で5秒短縮×月間20日発生」、1カ月あたり100秒の削減と記載されています。サーバー内のフォルダを27から16へ整理した事例では、「1日平均で60秒短縮×月間20日発生」、1カ月あたり1,200秒の削減です。

1回は数秒でも、月に直すと差が出ます。一方で、これらは各事例記事に記載された試算で、他の現場で同じ数字が出ることを約束するものではありません。事例の詳しい一覧は、改善事例の章に表にまとめました。

効果は、自分の現場の「三日間」で確かめる

他社の数字は、自分の現場の効果を保証してくれません。そこで、次の方法をおすすめします。

  • 改善する前の三日間、探した回数と、おおよその時間をメモする
  • 置き場を変えたあと、同じ条件で三日間、同じメモを取る
  • 数字が出なければ、「探さずに戻せたか」を、使う人に聞く

正確なストップウォッチでなくても構いません。「前より減った」「変わらない」「増えた」が分かれば、次の一手を決められます。効果が出なかったときは、その置き場の決め方を見直す材料になります。

効果を数字で語るときの注意

効果を数字で示すと、説得力が増します。一方で、数字だけを追うと、点数を上げるための見せる改善になりやすくなります。数字は、探す・運ぶ・待つが減ったかを確かめる道具として使い、現場の人を比べる道具にはしないほうが、長続きします。

5S活動が続かない・定着しない理由|元に戻るのは仕組みが足りないから

5S活動が元に戻る理由は、意識の低さではなく、仕組みの不足にあります。整理の判断基準がない、モノが増える入口が止まっていない、置き場が使う人に合っていない、点検と評価がない、一人で抱えている。この五つのどれかに当てはまることが多いです。元に戻ったのは誰かがだらしなかったからでしょうか。まずは仕組みの側から見てみましょう。

なお、ここで挙げる五つは、多くの現場で起きがちな一般的なパターンです。理由2から4には、5S-CONCEPTに公開されている改善事例の「改善前の状態」を、実際の場面として添えました。改善前の状態の記述は事例記事によるもので、その現場が5Sを怠っていたという意味ではありません。

理由1:モノが増える入口を止めていない

整理をして棚を空けても、発注や持ち込みが変わらなければ、数週間で元の量に戻ります。片付けは「出口」の作業で、増える理由は「入口」にあるからです。

入口を止める方法は、大きく三つあります。発注の前に置き場の空きを確かめる。持ち込みのモノに置き場の上限を決める。使い終わった段ボールや梱包材の一時置き場を決める。こうした決まりがないまま整理だけを繰り返すと、頑張るほど疲れてしまいます。

理由2:置き場が、使う人の手と目線で決められていない

ラベルを貼っても、使う人がそのラベルを見ていなければ、戻すときに迷います。棚という棚にラベルがあっても、実際に使う人が見るのは一か所だけ、ということも珍しくありません。

置き場は、いちばん使う人の手の届く高さ、動く向きから決めます。決める前に、使う人に一言聞いてみるだけで、置き場の精度は大きく変わります。

公開事例より:消耗品の有無を判り易くするでは、タップなどの消耗品が、品名を表示した透明袋に入っていたのに、引出しの中に無造作に入れられていました。専門家コメントでは、在庫状況が分かりづらく余分な発注が発生していた点が指摘され、ホワイトボードの枠を利用して吊り下げる形に変えた改善が紹介されています。記載された効果は、1日平均30秒短縮×月間10日発生、1カ月あたり300秒の削減です。

理由3:ルールを決めたあとの点検と是正がない

中小機構の解説では、5Sを進める流れとして、計画・実行・点検・是正のPDCAの考え方が示されています。ルールを決めて終わりにせず、決めたあとに点検し、合わなければ直す。これがないと、決まりは掲示物のままになります。

点検は、大がかりなものでなくて構いません。月に一回、置き場の写真を撮って前回と並べるだけでも、ずれに気づけます。

公開事例より:誰が行ったかの確認を見える化では、コンプレッサーのフィルター清掃について、従来は清掃漏れによる不調が起きるたびに内部を確認していたと記されています。実施日を記録するチェックシートにしたことで、誰がいつ清掃したかが一目で分かるようになりました。記載された効果は、1日平均300秒削減×月間1日発生、1カ月あたり300秒の削減です。

理由4:評価とフィードバックがなく、頑張りが見えない

中小機構のQ&Aでは、活動の推移が分からないと継続が難しくなるため、評価基準を明確にし、進捗を毎月確かめることが挙げられています。頑張って改善しても、誰にも見てもらえず、点数もつかなければ、次のやる気は続きません。

評価が悪いのではなく、評価の仕方が「きれいかどうか」の感覚だけだと、派手な改善ばかりが目立ちます。5S-CONCEPTでは、この点を5つの軸で見る評価モデルを使っています。詳しくは、良い5Sの見分け方の章で説明します。

公開事例より:トイレ清掃チェックの見える化では、当番表があっても、当番の日以外に掃除が行われたかどうかが分からず、都度確認していたと記されています。項目ごとに記入するチェックシートに変えて、実施状況が外から見えるようになりました。「誰が当番か」は分かっても「やったか」が見えない状態は、頑張りが見えない状態の一例です。

理由5:言い出した人が一人で抱えている

5Sの時間は、生産の合間から削り出している現場が少なくありません。言い出した人が一人で片付け、一人だけ遅くまで残る。これでは、続かなくて当然です。

役割を分けることも、5Sの大事な仕組みです。置き場の決めは使う人に頼む、点検は月ごとに持ち回りにする、写真は誰でも撮れる形にする。一人に負荷を集めない決め方が、続けるための条件になります。

続かない理由を「症状→見分け方→直し方」で整理する

よくある症状見分け方仕組みの直し方
片付けても数週間で増える発注・持ち込みの確認がない置き場の上限と、発注前の確認を決める
ラベルがあるのに戻せない使う人が見る場所にない使う人に聞いて、手と目線に置き直す
決まりが掲示物のまま点検日と、見る人がいない月一回の点検と、写真の比較を入れる
やる気が続かない改善が誰にも見えていない評価の軸と、見てもらう場を作る
一人だけが残って作業している役割が分かれていない置き場・点検・記録を持ち回りにする

表の中で、自分の現場に当てはまるものを一つだけ選んでください。全部を直そうとせず、一つの仕組みだけを変える。それが、元に戻らない5Sへの近道です。

原因3つと処方箋5つ(やらされ感をなくす方法)を、さらに詳しく解説した記事もあります。5S活動のネタ切れ解消法|続かない・形骸化する根本原因と5つの処方箋を現場目線で解説

5S活動の進め方7ステップ【期間の目安つき】

5S活動は、目的と持ち場を決め、現状を残し、整理・整頓・清掃・清潔の順に進め、習慣(しつけ)として標準にして続ける、という七つのステップで進めると迷いません。以下の期間は、工具棚や通路一か所のような小さな持ち場から始めたときの目安で、5S-CONCEPTの一般的な提案です。工場全体や特定企業の実績の数字ではなく、現場の状況によって変わります。

ステップ1:目的と最初の持ち場を決める(目安:数日〜1週間)

最初に決めるのは、「何のためにやるか」と「どこからやるか」です。目的は、「朝の探し物を減らす」「通路の安全を確保する」のように、現場の言葉で一文にします。持ち場は、いちばん困っている一か所に絞ります。全体を一度に変えようとすると、途中で息切れします。

つまずきやすいのは、目的が「5Sをやること」になってしまうことです。やることではなく、減らしたいムダを目的にします。

ステップ2:現状を写真とメモで残す(目安:数日)

改善前の写真を撮り、探した回数、歩いた距離、困った場面を短くメモします。あとで比べるための土台になります。

写真は、同じ場所から、同じ角度で撮ります。撮り方がそろっていると、月に一回の点検でも、ずれがすぐ分かります。

ステップ3:整理|不要なモノを探しても存在しない状態に近づける(目安:1〜2週間)

使う頻度で四つに分けます。毎日、週に一回、月に一回以下、使い道が分からない。判断が付かないものは一時置き場に移し、責任者と保管期限を決めます。

つまずきやすいのは、一人で判断して、後から「あれは必要だった」と言われることです。使う人の目で確認することが大事です。

ステップ4:整頓|置き場を決めて戻しやすくする(目安:1〜2週間)

3定、つまり定置(どこに)・定品(何を)・定量(いくつ)を決めます。使う頻度が高いものほど、手元に近い位置に置き、モノに最高の効率で働いてもらう置き方を探します。

置き場は、まず紙の仮表示や100均の小物のような、貼り直せる方法で試します。実際に数日使ってから、本表示に切り替えます。合わなければ戻せる、が続けるコツです。

ステップ5:清掃|ピカピカを維持しながら、異常と汚れの発生源を見つける(目安:初回1週間、その後は毎日の短い時間)

初回は、設備や床の汚れを取りながら、汚れが出る場所を記録します。オイルのにじみや粉じんの発生源が分かれば、拭く回数を減らす対策を考えられます。

設備の分解や修理が必要な場合は、メーカー仕様と社内の手順、担当部署への連絡を優先します。現場だけで危険な作業を進めないでください。

ステップ6:清潔|モグラ叩きを止める、未然防止の仕組みを織り込む(目安:1〜2週間)

ステップ5で見つけた汚れの発生源や、モノが増える入口に、対策を織り込みます。たとえば、発注前に置き場の空きを確かめる、汚れが出る場所に受けを付ける、乱れにくい置き方に変える、といった対策です。拭いて戻す作業を繰り返さずに済む形にします。

つまずきやすいのは、見つけた汚れや乱れを、その都度直すだけで終わることです。発生を止める対策まで進めると、モグラ叩きから抜けられます。

ステップ7:習慣(しつけ)|良いやり方を標準にして、点検と評価で続ける(目安:毎月)

清潔で見つけた良いやり方を、置き場の写真、手順の一枚紙、点検表などの標準にします。そのうえで月に一回、写真を撮って前回と比べ、評価します。点数をつけるときは、5つの軸で見て、次の一手も一緒に書きます。ここが、多くの現場で抜けやすいところです。

点検で戻りが見つかっても、責めません。置き場や決め方のどこがずれたのかを見直す、貴重な材料です。

厚生労働省の「生産性向上ガイドライン」関連の手引きにも、取り組みの進捗を管理し、振り返る「進捗管理シート」の使い方が示されています。業種は異なりますが、担当と期限を決めて振り返るという考え方は、5Sの月一回の点検にも通じます。

7ステップを一枚で見る

ステップやること期間の目安よくあるつまずき
1目的と最初の持ち場を決める数日〜1週間目的が「5Sをやること」になる
2現状を写真とメモで残す数日撮り方がそろっていない
3整理する1〜2週間一人で判断してしまう
4整頓する1〜2週間貼り直せない方法で決める
5清掃する初回1週間原因を見ずに拭くだけ
6清潔|未然防止を織り込む1〜2週間その都度直すだけで終わる
7習慣(しつけ)|標準化と点検・評価毎月点数だけで終わる

7ステップの役割分担表:一人に負荷を集めない

続かない理由の一つは、言い出した人が一人で抱えることでした。次の表は、5S-CONCEPTの一般的な提案として、ステップごとの役割の分け方の例をまとめたものです。現場の人数や体制に合わせて読み替えてください。

ステップまとめ役(言い出した人)使う人(作業者)工場長・課長など上の人
1 目的と持ち場案を出す困りごとを話す目的を確認し、時間を確保する
2 現状を残す撮り方を決める探した回数をメモする写真を見て課題を共有する
3 整理進行役要る・要らないを判断する一時置き場の保管期限に合意する
4 整頓案を示す置き場の高さ・向きを決める必要な備品を承認する
5 清掃点検の見方を伝える汚れの発生源を報告する設備の対応を担当部署へつなぐ
6 清潔発生源と入口の対策案を出す使ってみて直す点を伝える対策に必要な時間と備品を認める
7 習慣(しつけ)標準を一枚にまとめ、点検を持ち回りにする標準に沿って戻し、点検に参加する評価を聞き、次の一手を後押しする

すべてを同時に始める必要はありません。まずステップ1と2だけを、今週の休憩時間に試してみてください。

5S活動の置き場の決め方と低コスト改善|3定と100均グッズで小さく試す

置き場は、3定(定置・定品・定量)を、いちばん使う人の手と目線から決め、貼り直せる低コストの方法で試して決めるのが近道です。最初から専用の棚や設備を買う必要はありません。合わなければ戻せる方法で始めれば、失敗の痛みも小さくなります。ここでは、置き場の決め方と、低コストで試す考え方を整理します。

3定とは、「どこに・何を・いくつ置くか」を決めること

3定とは、定置(どこに置くか)、定品(何を置くか)、定量(いくつ置くか)の三つを決めることです。モノを大切にするとは、モノに最高の効率で働いてもらう置き方を追求することです。

  • 定置:工具はここ、書類はここ、と場所を一つに決める
  • 定品:その場所には、決めたモノだけを置く
  • 定量:最大の数と、最小の数を決める

定量が決まると、「足りない」と「多すぎる」の両方がすぐ分かります。発注のタイミングも、数を見て決められます。

使う人の手と目線から決める

置き場を決める前に、使う人が作業する様子を見せてもらいます。右手で取るのか、立ったまま取るのか、腰をかがめるのか。使う頻度が高いものほど、動かずに取れる位置に置きます。

「何を決めれば戻しやすいか」は、その仕事をしている人がいちばん知っています。決める前の一言の相談が、置き場の精度を大きく上げます。

形跡管理で、戻す場所を「形」で示す

形跡管理とは、置く場所に、そのモノの輪郭や形を描いておき、戻す場所を形で示す方法です。工具の影のように、空いた場所を見て、何が足りないかがひと目で分かります。

ラベルの文字を読まなくても戻せるので、新しく来た仲間や、別の持ち場から応援に来た人にも伝わります。ただし、工具の形や数が変わったときは、形跡も更新する必要があります。

公開事例より:工具掛け網棚の作成では、ベニヤ板に形跡整頓をしたところ、視界が悪くなったと記されています。背板を網に変えたことで、工具の有無がどこからでも分かるようになりました。形跡管理をしたことで別の困りごとが出て、素材を見直して直した例です。専門家コメントでは、工具が出払ったときに「何が掛かっていたか」を分かりやすくするため、名札や色合わせを加える次の一手が提案されています。記載された効果は、1日平均3秒短縮×月間5日発生、1カ月あたり15秒の削減です。

低コストで、戻せる方法から試す

置き場は、次の順番で試すと、失敗の痛みを小さくできます。

  1. 紙とテープで仮表示をする(費用はほとんどかからない)
  2. 100均の仕切り、トレー、フックなどで試す
  3. 数日から一週間、実際に使ってみる
  4. 使いにくい点を、使う人に聞く
  5. 良かったものだけを、本表示や専用の棚に変える

100均グッズの具体的な商品名や価格は、店舗や時期で変わります。ここでは、貼り直せる、動かせる、捨てても惜しくない、という選び方の考え方だけをお伝えします。

公開事例より:NC用エンドミルコレットの形跡整頓では、引出しに入れていたコレットを、専用のコレット立てを作って上向きに並べました。専門家コメントでは、台座側にサイズ表記を入れて、戻す位置を分かりやすくする次の一手が提案されています。記載された効果は、1日平均5秒短縮×月間20日発生、1カ月あたり100秒の削減です。

増える入口を止める決まりを、置き場とセットにする

置き場を決めても、モノが増える入口を止めなければ、元に戻ります。置き場の上限に達したら、新しいモノを置く前に、古いモノを整理する。こうした決まりを、置き場のすぐそばに書いておきます。

入口の決まりは、大きく三つです。発注の前に、置き場の空きを確かめる。持ち込むモノは、置き場を決めてから入れる。使い終わった梱包材や資材は、一時置き場を決める。この三つを置き場とセットにするだけで、元に戻る速度は変わります。

5S活動の改善事例|公開データと実例から見る小さな改善と場所別の最初の一手

5S活動の改善事例は、大きな設備投資より、「探す・運ぶ・待つ」を数秒減らす小さな工夫が中心です。5S-CONCEPTには、専門家がS〜Dの5段階で評価した改善事例が公開されており、評価が付いた記事は2026年9月27日時点で841件です。この章では、その公開データの内訳と、実際に公開されている事例、場所別の最初の一手を整理します。数字はすべて、サイトの公開情報を集計したものです。

公開事例の内訳:ランク別・場所別・対象別(2026年9月27日時点、自社集計)

まず、改善評価(S〜Dランク)別の件数です。

ランク記事数評価が付いた記事に占める割合
Sランク4件約0.5%
Aランク62件約7.4%
Bランク295件約35.1%
Cランク393件約46.7%
Dランク87件約10.3%

評価が付いた記事の合計は841件です。Cランクが最も多く、Sランクは4件です。高い評価は少数で、多くの改善は「ここまでは良い、ここが惜しい」という途中経過にあります。評価の軸と配点は、良い5Sの見分け方の章で説明します。

次に、改善場所別と改善対象別の件数です。一つの記事に複数の場所や対象が付く場合があるため、合計は記事数と一致しません。

区分項目と記事数(多い順)
改善場所工場647件、オフィス113件、倉庫64件、設備28件、建屋外19件、掲示板4件
改善対象工具/備品345件、設備125件、材料/部品66件、書類60件、情報40件、廃棄物38件

工場の事例が最も多く、対象では工具や備品が最も多くなっています。カテゴリー別では、整頓が552件と最多で、整理244件、清掃126件、清潔50件、習慣(しつけ)45件が続きます。

公開事例10件を一覧で見る:ビフォー・アフターと記載された効果

次の表は、公開されている事例から、ランクや場所、対象がばらけるように10件を選んだものです。効果の欄は、各事例記事に記載された内容です。

事例(記事へのリンク)ランク・場所ビフォー→アフター記載された効果
工具掛け網棚の作成Aランク・工場ベニヤ板に形跡整頓をしたら視界が悪くなった→網に変えて工具の有無が分かる1日3秒×月5日=月15秒
サーバー内フォルダの整理(業務課)Aランク・オフィス不要なフォルダが増え検索に時間がかかる→フォルダ数27から16へ整理1日60秒×月20日=月1,200秒
ラジアルボール盤のドリル台にキャスターを付けるAランク・工場ドリル台がベタ置き→キャスターを取り付け、下を掃除しやすくした1日4秒×月20日=月80秒
NC用エンドミルコレットの形跡整頓Bランク・工場コレットが引出しに入っている→コレット立てを作成1日5秒×月20日=月100秒
ベンダー横にエアーガンを常設Bランク・工場ダスキンでテーブルを清掃→エアーガンでほこりを一掃1回600秒×月1回=月600秒
トイレ清掃チェックの見える化Bランク・工場当番以外の日に実施されたか分からず都度確認→チェックシートで一目で分かる1日5秒×月5日=月25秒
電気スイッチの表示2Cランク・工場スイッチが多く表示がなかった→ペンキを塗り表示1日10秒×月20日=月200秒
排水管の見える化Cランク・設備排水管が全て地下にあり、詰まって1か月排水を流せなくなった→排水口を全て地上に出した工事費用432,000円(15年に1回)、月あたり2,400円(工事費用の月割り)と記載
ファイル別に表示Dランク・工場鋼材別のファイルに表示がない→ファイルに鋼材名称を明示1日15秒×月20日=月300秒
机上の整理整頓Sランク・オフィスゴム印が取り出しにくい・戻しにくい→出しやすくした「ゴム印が出しやすくなった」と記載(秒数の記載なし)

表の内容は、各事例記事の記載を要約したものです。詳しい写真と専門家コメントは、リンク先の事例記事でご覧ください。

事例の読み方:効果は「秒×回数」、ランクは効果の大きさだけで決まらない

この表から読み取れることが、三つあります。

第一に、多くの事例の効果は「1日数秒〜数十秒×月間の発生日数」です。1回は小さくても、繰り返しの多い作業ほど月に直したときの差が出ます。

第二に、ランクは効果の大きさだけで決まりません。たとえば、工具掛け網棚は月15秒の削減でもAランク、排水管の見える化は工事費用432,000円の設備改善でもCランクです。評価には、改善の独自性や、元の問題が戻りにくいか、習慣として続いているかも関わります。

第三に、Sランクの事例も、派手な設備投資ではありません。机の上のゴム印を出しやすくした改善や、金型交換のたびに必要だった高さ調整をなくした改善など、専門家コメントでは「問題が起きる前に止める仕組み」になっている点が評価されています。大きさや派手さではなく、問題を未然に防ぐ仕組みになっているかが評価されている例と読めます。

なお、事例の効果や費用は、その現場での試算や実績で、他の現場で同じ結果になることを約束するものではありません。設備や配管の工事を伴う改善は、社内の決まりや専門業者の手順に従って進めてください。

専門家コメントに書かれる「次の一手」の例

公開事例には、改善を褒めるだけでなく、次の一手が添えられています。

  • 工具掛け網棚:工具が出払ったときに、何が掛かっていたかが分かるよう、名札や色合わせを加える
  • コレットの形跡整頓:台座側にサイズ表記を入れて、戻す位置を分かりやすくする
  • 机上のゴム印:どのハンコをどの場所に戻すかを、色分けで分かりやすくする
  • 給与関係書類整理(Dランク):処理中・保留・完了の三つのトレイに分け、終業前に5分の整理時間を設ける
  • ファイル別に表示(Dランク):使用頻度の高いファイルを手前に置き、色分けタブを加える

改善が終わりではなく、次の改善の入口になっていることが分かります。自分の現場でも、「次にもう一段するなら何か」を、一つ書き残してみてください。

場所別の最初の一手:工場・倉庫・事務所・建屋外

ここからは、5S-CONCEPTの一般的な提案です。特定の現場の実績ではありません。場所によって、探す・運ぶ・待つが起きやすいところが違います。

場所ありがちな困りごと最初の一手見るところ
工場工具や治具を探す、通路にパレットが出る工具の置き場を、形跡で決める朝の探す回数、通路の幅
倉庫置き場が分からず、探して歩く棚に住所(番号)を付け、動線を見直すピッキングの往復距離
事務所書類が探せない、共有のモノが行方不明になる書類の置き場を工程順にし、共有物の戻し先を決める探す回数、引き継ぎの手間
建屋外・資材置き場雨や風でモノが散らばり、安全が保てない置き場の区画と、上限の高さを決める通路の確保、飛散のおそれ

工場では、工具や治具、通路の使い方が、毎日の動きに直結します。まず、いちばん頻繁に探すものを一つだけ選び、置き場を形跡で決めるところから始めます。通路は、線を引くだけでなく、置き場の上限を決めることが大事です。安全に関わる通路や設備の周りは、社内の決まりを優先してください。 工場の事例を、ランク別・対象別に並べて読みたい方は、工場の5S改善事例14選をご覧ください。

倉庫では、棚と置き場に住所(番号)を付けることで、初めて来た人でも探せる状態にできます。置き場を変えるときは、重い荷物を高いところに置かない、通路の幅を確保する、といった安全の基本を守ります。

事務所では、書類の置き場を、仕事の流れ(受ける、処理する、保管する)の順に並べるだけで、探す時間は変わります。公開事例のサーバー内フォルダの整理も、フォルダ数を27から16へ減らす整理が、検索時間の削減につながった例です。共有の道具には、戻し先の表示と、持ち出すときの決まりを付けます。誰かのうっかりを責めず、「戻し先が分かるか」を確認する。ここでも、問題は人ではなく、仕組みに戻します。

公開事例を自社に取り入れる手順:費用と時間の目安

公開事例をそのまま真似するのではなく、次の手順で自分の持ち場に合わせて取り入れます。

  1. 表の中から、自分の持ち場と似た「ビフォー」の事例を一つ選ぶ
  2. 事例記事で、写真と専門家コメントの「次の一手」まで読む
  3. 自分の現場の探した回数を、三日間メモする
  4. 費用のかからない仮の方法で、一週間試す
  5. 使う人に聞いて、良かった点と直す点を書き出し、本表示に変える

費用と時間の幅は大きく違います。公開事例の中には、専門家コメントで「費用をかけずに実施できる」と紹介されているファイル別の表示のような改善もあれば、排水管の付け替えのように工事費用が数十万円規模の改善もあります。最初は、費用のかからない改善から始めるほうが、失敗の痛みが小さくなります。

5S活動のネタ切れ・マンネリを抜けるアイデアの探し方

5S活動のネタが尽きたと感じたら、新しい改善案を無理に探すのではなく、「探す・運ぶ・待つ」が残っている場所を、対象別に探し直すと見つかります。マンネリの原因は、アイデア不足というより、見る場所が同じになっていることが多いからです。毎月ばらばらの小さな改善が、実は同じ工程の段取りにつながっていた、ということもあります。

「探す・運ぶ・待つ」を、対象別に見直す

対象を変えると、見落としていたムダが見つかります。

対象探す場面運ぶ・待つ場面アイデアの方向
工具・治具作業前にどこにあるか探す遠い置き場まで往復する使う位置の近くに置き、形跡で戻す
書類・帳票必要な書類を探して引き出す印鑑や承認待ちで止まる置き場を工程順にし、様式を統一する
床・通路パレットや台車の置き場を探す通路が狭く、遠回りする通路の線と、置き場の上限を決める
消耗品・副資材在庫の場所が分からない足りず、買いに行く定量を決め、最小の数で補充する
掲示物・表示古い表示が残り、見ない表示を見ても意味が分からない見るタイミングの位置に置き、内容を絞る

自分の持ち場で、まだ一度も見直していない対象を一つ選んでみてください。新しい一手が、そこに眠っていることがあります。

公開事例の「対象別の件数」から、手つかずの対象を探す

5S-CONCEPTの公開事例を、改善対象別に数えると、工具/備品が345件、設備が125件、材料/部品が66件、書類が60件、情報が40件、廃棄物が38件です(2026年9月27日時点、自社集計)。一方で、通路は7件、窓は4件、トイレは3件と、公開事例が少ない対象もあります。

事例が少ない対象は、参考にできる例が少ないだけで、見直す余地がないという意味ではありません。自分の持ち場で、まだ手をつけていない対象がないか、通路や表示、掲示物などを順に見ていくと、ネタが見つかることがあります。ほかの現場の事例は、カテゴリー別に読めます。整理、整頓、清掃、清潔、習慣(しつけ)の各カテゴリーから、自分の持ち場と近い場面を探してみてください。

点数が上がっても、作業が楽にならないとき

巡回の点数が上がり、ほめられるようにもなった。それでも、作業は少しも楽になっていない。こうしたずれは、多くの現場で起きがちです。

この場合は、点数ではなく、「探す・運ぶ・待つが減ったか」で確かめ直します。巡回で目立つ通路や入口ばかり整えていて、自分の持ち場の困りごとが手つかずのこともあります。困りごとの多い場所から始める順番を、見直してみましょう。

他の現場や家庭のアイデアを、小さく借りる

台所の引き出しの仕切りや、洗面所の収納は、置き場の答えのヒントになります。100均の小物で試し、合わなければ戻すやり方は、低コストで続けやすい方法です。

借りるときは、そのままコピーせず、自分の持ち場の使う人の手と目線に合わせて調整します。合わなければ戻す前提で、まず一つだけ試してみてください。

小さな改善を、記録で一本につなげる

毎月ばらばらの改善に見えても、記録を並べると、同じ工程の段取りに集まっていることがあります。改善前後の写真と、探した回数のメモを月ごとに残しておくと、「なぜこの改善が効いたのか」を後から振り返れます。

記録は、次のネタを探すときの地図にもなります。書くことが負担になるなら、写真一枚と一行だけで十分です。

ネタ切れの原因と、対象別の見直しヒント・よくある質問は、こちらの記事にまとめています。5S活動のネタ切れ解消法|続かない・形骸化する根本原因と5つの処方箋を現場目線で解説

良い5Sと「やってるつもり5S」の見分け方|5軸評価とチェックシート

良い5Sかどうかは、きれいさではなく、「探す・運ぶ・待つが減ったか」「元に戻りにくいか」「次の人も同じようにできるか」で見分けます。5S-CONCEPTでは、成果・独自性・難易度・清潔・習慣の5つの軸で見る評価モデルを使っています。この評価モデルは5S-CONCEPTの一例で、業界標準や公的な基準ではありません。

「やってるつもり5S」に見られる、5つの兆候

次のチェックリストで、自分の持ち場を見てみてください。当てはまる数が多いほど、仕組みの見直しどころが多いと考えられます。責めるための表ではなく、次の一手を探すための表です。

  • [   ] 整理のあと、モノが増える入口(発注・持ち込み)を止める決まりがない
  • [   ] 置き場を、使う人に聞かずに決めた
  • [   ] 点検の日と、点検する人が決まっていない
  • [   ] 改善の前後を、写真や数字で比べていない
  • [   ] 巡回の点数は上がっても、探す・運ぶ・待つが減った実感がない
  • [   ] 新しく来た仲間が、説明なしでは戻せない置き場になっている

一つでも当てはまるなら、それは「やってるつもり」ではなく、「次に育てる場所が見つかった」ということです。

5つの軸:成果・独自性・難易度・清潔・習慣

評価は、「きれいに見えるか」の感覚だけだと、見る人によって点数が変わります。5つの軸に分けると、見るところがそろいます。

軸見ること見落としやすい点
成果の大きさ探す・運ぶ・待つが、どれだけ減ったか金額だけで見てしまう
改善の独自性自分の現場に合わせた工夫があるか流行の道具の導入で終わる
改善の難易度技術・調整・時間の壁を、どう越えたか手間の少ない改善が軽く見られる
清潔レベル元の問題が、戻りにくくなっているか改善直後のきれいさだけを見る
習慣レベル決めたことが、続いているか一回の点検で判断する

各軸は20点、S〜Dの5段階で採点する

5S-CONCEPTの評価モデルでは、5つの軸をそれぞれS=20点、A=16点、B=12点、C=8点、D=4点で採点し、合計で総合ランクを決めます。総合ランクの境界は、S=81点以上、A=66〜80点、B=46〜65点、C=31〜45点、D=30点以下です。

総合ランク合計点の目安公開事例の件数見方
S81点以上4件他の現場も参考にできる水準。ただし、成立条件を確かめてから展開する
A66〜80点62件良い仕組み。あと一段の改善点が見えている
B46〜65点295件ここまでは良い、ここが惜しい。次の一手を書き出す
C31〜45点393件入口の対策や点検の決まりを見直す段階
D30点以下87件責めずに、小さな一手から始める段階

公開事例の件数は、2026年9月27日時点で、S〜Dの評価が付いた記事の数です。各軸が4点刻みなので、実際の合計点は4点刻みの値になります。境界の点数は、5S-CONCEPTのモデルとしての区切りです。低い点数の人や部署に、能力ややる気がないという意味ではありません。

Dランクは「失敗」ではなく、費用をかけずに始められる基本の一歩

Dランクの事例は87件あります。たとえば、ファイル別に表示は、鋼材別のファイルに鋼材名称を明示した改善です。専門家コメントでは、既存のファイリングを活かした最小限の工夫で、費用をかけずに他の部署へも広げやすい点が挙げられています。同時に、使用頻度の高いファイルを手前に置く、色分けタブを加えるといった次の一手も示されています。

給与関係書類整理も、Dランクの事例です。机の上に積み上がった書類を整理した改善で、専門家コメントには、処理中・保留・完了の三つのトレイに分ける、終業前の5分に整理する時間を設ける、といった「ちょい置き」を防ぐ次の一手が書かれています。

Dランクは、手を動かした証拠であり、次の一手が明確になった状態です。評価が低いことを理由に、改善した人を責める必要はありません。

評価は「順位づけ」ではなく「次の一手」を決めるために使う

点数だけを付けて終わりにすると、現場に残るのは順位だけです。評価シートには、確認できた強み、各軸の点数と根拠、一段上げるための次の一手、再評価の日を、セットで残します。

厚生労働省の「生産性向上ガイドライン」関連の手引きでも、取り組みを評価する定量的な基準がなく、ゴールが見えないことが課題として取り上げられ、アセスメントシートを作る事例が紹介されています。評価の基準を決めて共有することは、5Sに限らず、改善活動を続けるための土台と言えます。

詳しい配点や運用の方法は、既存記事「5S活動のマンネリ化を打破!現場が動く『5つの評価基準』とチェックシート活用法」で説明しています。

評価シートは、登録なしで使える配付資料から始める

5S-CONCEPTでは、配付を許可した評価シートのPDFを用意しています。名前も連絡先も入力せずに、そのまま開けます。まず、過去の改善を一件選び、二人で別々に採点してみてください。点数が違った場所が、評価の言葉をそろえるヒントになります。

配付資料:5S活動実績評価集計表(PDF)

5S活動のよくある質問(FAQ)

5S活動でよくある質問を、現場の口ぐせに近い言葉で並べ、一文目で答えるようにまとめました。自分の持ち場に近い質問から読んでください。

5S活動は、製造業以外の職場でも役に立ちますか?

はい、製造業以外でも役に立ちます。事務所、倉庫、店舗、医療や介護の現場でも、探す・運ぶ・待つは起きているからです。5S-CONCEPTの公開事例でも、オフィスの事例が113件あります。ただし、置き場の決め方や安全の基準は職場ごとに違うため、その職場の決まりや専門の手順を優先し、自分の職場に合わせて読み替えてください。

5Sと3Sは、何が違いますか?

3Sは、一般に整理・整頓・清掃の三つを指し、5Sは、そこに清潔と習慣(しつけ)を加えた呼び方です。5S-CONCEPTでは、清潔を、3Sがモグラ叩きになりがちなため、発生を未然に防ぐ仕組みを織り込む活動と捉えています。習慣(しつけ)は、清潔で見つけた良いやり方を標準化する活動です。公的な資料では、整理・整頓・清掃・清潔を4Sとし、5つ目を「躾」と書いて5Sとしています。会社によって、6Sや7Sのように安全などを加えて呼ぶこともあるため、自社での意味を最初に確認しておくと、話がそろいます。

5S活動は、何から始めればよいですか?

いちばん困っている一か所を選び、改善前の写真を撮るところから始めてください。次に、その一か所で探した回数をメモします。全体を一度に変えようとせず、小さな持ち場で試し、うまくいったら広げるほうが、元に戻りにくい進め方です。

ベテランが協力してくれません。どうすればよいですか?

ベテランを説得しようとせず、まず「いちばん使う人の手と目線」を聞かせてもらってください。長く働いている人は、暗黙の知恵を持っています。置き場の決め方に、その知恵が入っていると、協力してもらいやすくなります。問題は、人の気持ちではなく、決め方の場に呼ばれていないことのほうが多いです。

忙しくて、5Sの時間が取れません。

一回10分程度の短い時間を、毎日ではなく、週に一回から始めてください。5Sの時間は、生産の合間から削り出すことが多いため、大がかりな日を設けるより、短く区切るほうが続きます。時間を取るより先に、探す・運ぶ・待つを減らす場所を一つ選ぶことが近道です。

ラベルを貼ったのに、元に戻ってしまいます。どうして?

ラベルは貼れば終わりではなく、使う人が見る位置にあるか、戻す場所が使う人の手に合っているかが大事です。元に戻る原因は、多くの場合、モノが増える入口を止めていないこと、置き場が使う人に合っていないこと、点検がないことにあります。ラベルを増やす前に、この三つを見直してみましょう。

5Sの評価や点数は、必要ですか?

評価は、あったほうが続けやすくなります。中小機構のQ&Aでも、活動の推移が分からないと継続が難しくなるため、評価基準を明確にすることが挙げられています。ただし、評価は順位を付けるためではなく、次の一手を決めるために使うことが大事です。

5Sにお金はどれくらいかかりますか?

費用は、現場の規模や内容によって大きく変わります。公開事例では、専門家コメントで「費用をかけずに実施できる」とされた表示の改善がある一方、排水管を付け替えた事例のように工事費用が432,000円と記載された改善もあります。最初は、紙とテープの仮表示や、100均の仕切りのように、費用の小さい方法で試し、効果を確かめてから本格的な設備を検討するのが安全です。金額の目安は、現場ごとに見積もって決めてください。

5S活動のネタが尽きてしまったら?

新しい改善案を探すより、探す・運ぶ・待つが残っている対象を見直してください。工具、書類、床、消耗品、表示など、まだ見ていない対象を一つ選ぶと、次の一手が見つかります。点数が上がっても作業が楽になっていないなら、点数ではなく、減ったムダで確かめ直します。

5S活動の事例は、どこで見られますか?

5S-CONCEPTの公開事例は、整理・整頓・清掃・清潔・習慣(しつけ)のカテゴリーから読めます。工場、オフィス、倉庫といった場所別や、工具、書類などの対象別、S〜Dの評価別にも分類されています。各事例には、ビフォーとアフター、記載された効果、専門家コメントが付いています。自分の持ち場と近い場面を一件選び、次の一手まで読んでみてください。

まとめ|5S活動は「評価できる状態」にすると定着する

冒頭の、始業前のスパナ探しに戻ります。ラベルも線もあるのに、探す時間が減らない。その原因は、誰かの意識ではなく、置き場・入口・点検・評価のどれかに仕組みが足りないことでした。5S活動とは、整理・整頓・清掃・清潔・習慣(しつけ)を通じて、ムダや異常が起きにくく、起きてもすぐ見える職場をつくり、そのやり方を標準として根づかせる活動です。掃除ではなく、探す・運ぶ・待つを減らす仕組みづくりとして、見え方が変わったのではないでしょうか。

この記事のポイントを、三つに絞ります。

  1. 元に戻る原因は、人の意識ではなく、入口・置き場・点検・評価・役割のどこかにある
  2. 進め方は、目的と持ち場を決め、写真で残し、整理・整頓・清掃・清潔の順に進め、習慣(しつけ)として標準にして続ける七つのステップ
  3. 良い5Sは、きれいさではなく、探す・運ぶ・待つが減り、戻りにくく、次の人も同じにできるかで見分ける

明日から試せる確認項目

  • [   ] いちばん困っている一か所を、一つだけ選んだ
  • [   ] 改善前の写真を、同じ角度から一枚撮った
  • [   ] 今朝、探したモノと回数を、メモした
  • [   ] いちばん使う人に、置き場の高さと向きを聞いた
  • [   ] モノが増える入口(発注・持ち込み)を、一つ確認した
  • [   ] 月に一回の点検日を、カレンダーに入れた

全部やる必要はありません。まず、写真を一枚撮って、探した回数を一つメモするところから始めてください。

評価を仕組みにしたい方へ

評価の考え方と配付資料は、記事の中で紹介したとおりです。次の一歩として、配付許可のある評価シートのPDFをダウンロードし、過去の改善を一件、二人で別々に採点してみてください:5S活動実績評価集計表(PDF)を無料ダウンロード

評価する人が毎月いなくても、判定がそろう仕組みが欲しい方へ。5S-CONCEPTを運営する私たちが提供予定の5S-WORKS!は、評価を仕組みにするための道具として位置づけています。この記事だけで、まず小さな一か所を試せるようにしているので、必要になったときの選択肢のひとつとして、頭の片隅に置いておいてください。

次に読む記事

参考文献・出典

公開事例の効果や費用は、各事例記事に記載された試算や実績で、他の現場での成果を約束するものではありません。

更新履歴

  • 2026年9月27日:初版作成。公開事例の件数は同日時点の集計です。件数と事例は、数か月ごとに見直します。
5Sが続かない本当の理由と、立て直す30日

無料ガイド『5Sが続かない本当の理由と、立て直す30日』

ラベルも線も引いたのに、三か月で元に戻る。そんな現場へ。誰か一人の頑張りに頼らず、チームで続ける仕組みのつくり方を、止まる7つのパターン・10問の自己診断・立て直しの30日にまとめました(A4・13ページ)。

無料で受け取る(PDF)
5S改善の報告書を、写真2枚から作れます
改善前・改善後の写真2枚で5S報告書が完成
改善前・改善後の写真とひとことから、A4の5S改善報告書が完成するアプリ「5S-Works!」。
いま無料の先行モニターを先着30名で募集しています。希望する1件について、5S-CONCEPTの専門家へ評価を依頼できます。評価依頼は1メールアドレスにつき1回で、点数・理由・コメントをメールでお返しします。

この記事を書いている会社について

チームで改善を続けられる、強い会社へ。

5S-CONCEPTを運営する株式会社事成すは、誰か一人の頑張りに頼っていた改善を、チームで続けられる会社の力に変えるお手伝いをしています。次の3つは、会社の課題に合わせて組み合わせてご利用いただけます。

30分の無料オンライン相談(平日9時〜17時)

5Sの止まりどころと最初の一手を、一緒に整理します。無理におすすめすることはありません。ご相談だけで契約が成立することもありません。

空いている時間を選んで予約する

社員を元気にする。会社を元気にする。そして街を元気にする。 株式会社事成す

この記事を書いた専門家

 大手総合電機メーカーで20年間経験を積んで平成22年に独立。16年間で900社を超える中小企業支援、そして自らも小売業を立ち上げて業績を安定させた実績を持つ超現場主義者。小さなチームで短期的な経営課題を解決しながら、中長期的な人材育成を進める「プロジェクト型課題解決(小集団活動)」の推進支援が支持を集めている。5S-CONCEPTでは、これまでに5S活動の改善事例338件を評価(2026年9月27日時点)。

目次